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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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736回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 521:それぞれの起源

 パレードをするフロート車の上から街の様子を眺めていると、海賊の街という割には治安が良いことに気付いた。


「この海域をナワバリにしてる海賊の方針なのかな」

 僕が独り言を言うとクガイが反応した。


「自分の縄張りをどういう環境にしておきたいかってのはそれぞれ違うからな。ここの場合は近海が治外法権扱いでインガの縄張りになるんで、こういう雰囲気の街になってるってこった」


 インガは海賊達を総べる溟海八武衆の一人でもあるから、そうした例外が発生するということか。


 ガフールさんから以前聞いた話では、海軍は基本的に後手にしか回れないらしい。

 港が火の海になった後に下手人を追うのが関の山といった具合に。


 だからそれを利用して人間を含めた野良の海賊が港や商船を好き放題荒らし回ってる。

 そうなるとその海域が貧しくなって海賊の稼ぎも減る。

 といった理由で海軍が対処しきれない海域をモンスター海賊が取り締まっているという話もよくあるらしい。


「なぁ雄馬、海賊団の名前は決めたのか?」

 クガイが僕に聞いた。


「黄金のガチョウ海賊団、みんなが僕の事を黄金のガチョウみたいだからって」


 それを聞いたインガがぴくりと反応して僕を興味深そうな顔で見た。


「ほーう、そりゃ奇遇だなインガ」

 クガイがそう言うと彼はフンとそっぽを向く、しかし彼はいつのまにか僕のそばにいた。


 コロコロした大きな海賊服のペンギンの可愛さの暴力が僕を襲う。


「あの、撫でても?」


「腕を折られたいなら構わんぞ」


「や、やめときます。そういえばクガイのブレーメン海賊団はどんな経緯で決めたの?」


「ブレーメンって割には仲間の獣種そろえてるわけじゃないしな」

 インガは言った。


「逸れ者の集まりって意味さ」

 そう言うと彼は照れくさそうに頭を掻く。


「ふーむ、なるほどな」

 インガは何やら納得した様子だ。


「つまり?」

 僕はそう言いながら恥ずかしそうなクガイに体を擦り寄せ圧をかける、彼は紅潮した顔を両手で隠し、指の隙間から恨めしそうに僕を見た。


 巨漢で無骨なシャチ獣人海賊の恥ずかし悶え、良い。

 僕はにんまり笑顔を浮かべてしまった。


「俺が代わりに説明してやろう」

 インガもニヤニヤしながら言った。


 八武衆のリーダーだったクガイの父ラクドは、邪神討伐のために絶海に向かって消息不明に。


 その時生き延びたのがクガイだけであった事から、みんなは彼を仲間を見捨てて逃げた臆病者と罵り、溟海八武衆貪狼の地位と彼の持つ宝輪を奪おうとした。


 それに対してクガイは我関せず、絶海に行きたいとだけ言って仲間を集めた。

 そんな立場の彼の元に集まるようなのは訳ありで追放された曲者だらけ、だが活躍を続け悪名を轟かせていく。


 他の八武衆達が死蔵してた紅蓮地獄を盗み出して、魔王海軍の連中を焚き付け人間達に宣戦布告までするに至った。


 弱体化した魔王海軍が人間の海軍との衝突で全滅することを恐れた他の溟海八武衆達は、彼らの手元に残された一隻の海王船をインガに託しクガイを止めろと命令した。


 しかしインガはクガイにつけば海軍に勝てそうだったためクガイに力を貸し、海軍の大艦隊を打ち破り、魔王海軍の海賊決起が達成された。

 

「とまあそれ以降こいつから勝手に親友扱いされて今にいたる、全くもって迷惑な話だ」


「それで逸れ者集団のブレーメンなんだ、なるほど」


「なんだよお前今日はよく喋るじゃんかよう、雄馬のこと気に入ったのか?」

 仕返しとばかりにクガイがいうと、インガは目を細めすまし顔でそっぽを向いた。


「そういえばインガさんも海賊なんですよね、どんな海賊団なんですか?」


「俺の海賊団の名はデラマンチャ、そしてあれが俺の船 暁ノ金鶏(あかつきのきんけい) だ」


 インガがそういうと眼前に白昼夢のような絢爛豪華な黄金の城が現れた。

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