74回目 ディストピア cis-18:1
クリーヴは遠くから吹いてくる冷たい風に体を震わせコートを手繰り寄せた。
季節が冬になり寒さをしのぐならお勧めな場所があると聞いていたクリーヴは、仕事の傍ら燃料資源の豊富な都市を訪れる。
驚くことに都市に入ると都市の中だけ屋外であっても温かい。
屋外にも大量のオイル式のストーブが設置されているのだ。
燃料による発電施設も多く都市のあちこちが煌びやかな電飾で彩られていた。
自分の置かれた状況が信じられないと思いながらもクリーヴはその豊かな都市での滞在を楽しみ、仕事を済ませると次の都市に向かうための寝台列車に乗り込んだ。
都市の住人達は皆優しく、クリーヴの他の滞在客も乗り込んだその列車が発進すると彼らが見送ってくれるほどだった。
クリーヴは快適だった都市での生活を振り返る。
クリーヴは資源都市と聞いて多少の騒音も覚悟していたのだが、都市はトレーラーの騒音などもなく静かだった。
静かだったのだがふとそれが気にかかった。
トレーラーが走っていなかったという事は採掘場がないからではないだろうか?
都市の住人から聞いた話によるとその都市はかつては脂肪分の豊富な鳥を捕まえて、
その油を抽出することで燃料としてそれを資源としていたという。
都市やその近隣には一切の動物を見かけなかった。
少し引っかかるものを感じたクリーヴは携帯端末をネットワークに接続してある国家の記事を辿った。
都市の近隣には人口爆発が起き国に戸籍を登録していない人間が数億と存在する国家があり、その人間の扱いについて国際問題にまで発展しかけていた。
その問題も数年前から不自然に騒がれなくなっている。
この燃料はもしかすると・・・。
クリーヴは寝台列車の自室のオイル式ストーブを止め、身震いを止めるために毛布をかぶった。




