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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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730回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 515:ブレーメン海賊団

 その後ヤブイヌ達のトレーニングがひと段落し昼飯時、僕らは紅蓮地獄の甲板に向かった。


 紅蓮地獄の甲板では既に飲めや歌えのどんちゃんさわぎをしていた。


「真昼間から酒盛りしてるにゃ」

 リガーが呆れながら早速お酒を飲み料理を食べ始めた。


「ずいぶん豪華な食事ですね、歓迎は嬉しいのですが大丈夫なんでしょうか?」

 マックスも少し不安がりながらも料理を取り皿に取り始めた。


 確かに船に積み込める食糧には限りがあるはずだ。


「よお!歓迎するぜ雄馬!!」


 クガイが大きな声でそう言うと僕の肩を掴み踊るように人混みに引き摺り込んだ。


「わわっちょっと待って」


「てめえら酒に飯山ほど持って来い!」


「あいよー!」

 船員達はそう答えて僕の両手に抱えきれないほどの酒と料理を押し付けてきた。


「わとと…」


「そいじゃーうちのメンバーの紹介するぜ。連絡役のオリバー!」


「ちーっスゥ」


 ニヤニヤ笑いのインコ獣人が僕の口に肉を突っ込んできた。

 小柄で煌びやかな羽が特徴的だ、以前ブラッドレイの船上でガフールと交渉した男だ。


 蛮族服を着たカワウソ戦士が襲ってきた。

 僕は咄嗟に抱えていた酒瓶を投げて応戦。

 蛮族が両手に持った手斧が酒瓶を次々切り飛ばして、その酒瓶を海賊達がキャッチしたり酒を浴びたり瓶が頭に当たって気絶したりする。


 酒瓶がなくなり僕は斧を避けながら蹴りで応戦する。

 空中に舞う料理を食べながら僕とカワウソは戦い続ける。


 バク宙で机がわりの木箱に飛び乗り、右の斧の攻撃を交わしながら飛び蹴りを見舞う。

 蹴りを喰らいながら左の斧を振るってきた。

 僕は体を横回転させ足で斧を絡めとり弾き飛ばし、着地した瞬間にカワウソの腹部を足の裏で蹴り上げた。


 手応えが薄い。

 カワウソは僕の蹴りに手を挟み、蹴りの威力を使いバク宙するとマストを掴んでぶら下がりケラケラ笑い出した。


「お前強い、ランダは強い奴歓迎だ!」


「コイツはランダ、強いやつと戦いたいって無理やり船に住み着いた蛮族だ。お前のとこの海兵が着てる衣装はこいつが俺らに着せようと持ち込んだもんでな、お前らが引き取ってくれて助かったぜ」


 言われてみると彼の装束はサメの仮面と民族服の意匠に似てる。


「んでこっちがうちのシェフのダルマー」


 クガイが紹介した先には筋肉ダルマの巨漢のセイウチ獣人がいた。

 コック服を着てなければただの戦闘員にしか見えない。


「なかなかいい食いっぷりじゃのう!料理を一欠片でも落としたら背骨へし折って海に捨ててやるつもりだったが、気に入ったわハハハッ!!」

 そういって彼は大量の料理を追加で並べていった。


「こっちはイーストウォッチタワー事件でダンウィッチの住民3万人を消しとばして指名手配になったマッドサイエンティスト、ドクターブロック」


 ワオキツネザル獣人の小柄な老人、白衣を身につけ両手両足が義肢、遮光ゴーグルを頭につけてる。

 ブロックはじとっとした目で僕を品定めするとつまらなさそうな顔をした。


「実験体にするには貧弱な体だワイなぁ」


「そこで超高速で片付けと船員の手当てをして回ってるのが俺たちの中でも随一の面倒見のいい奴、見張り番のトマ」


「暴れ回るのは程々に頼みますよ、片付け大変なんですから」


 やれやれとそう言いながら瞬く間に片付けていくイタチ獣人、確かに人が良さそうな雰囲気がある。


「そんでコイツが弓を使わせたら右に出る物なし、博打狂いのレイジ」 


 ポーカーをしているコノハズク獣人が手札を見て細くなり、相手にレイズされてボロ負けして頭を抱えている。

 典型的な下手の横好きギャンブラーみたいだ。


高速艇乗り(クォーターマスター) のヴカ…はどこだ?」


「あいつなら船室で酔い潰れてますぜ」


「しょうがねえ奴だな、ったく。こっちがうちの切込隊長のミサゴだ」


 鷹獣人の剣士は僕を冷たく一瞥するとフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いて酒を飲んだ。

 ちょうどその時僕の視界にみんなから避けられている様子の仮面を付けた異質な男の姿が見えた。


「あれは溟海八武衆の一人破軍のガルギムのおっさんだ」


「溟海八武衆がもう一人乗ってたの!?」


「まぁ訳ありでな、宝輪も自分の部下もなくしちまったからうちで身柄を預かってるんだ」


 仮面を付けたラブカ獣人だろうか。

 体もヌルヌルしていてみんな避けてる様子だ。


「八部衆殺しの疑いで軟禁中、みんな処刑するべきだと言ってるんだが、キャプテンの一存で生かしてる。まぁお荷物って奴だワイな」

 とブロックが補足した。


「そう言うなって博士」

 クガイは困り顔で言う。


 悪評の割には威儀の整った佇まいをしている。

 ただの罪人というには何か事情がありそうな雰囲気だ。


「俺達ブレーメン海賊団の主要メンバーはひとまずこんなとこだ、癖の強い奴だらけだが他の連中共々仲良くしてやってくれ」

 そう言うとクガイは僕の肩を叩いて笑顔を見せた。


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