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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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728回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 513:さあ冒険の旅へ!

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 数日後、僕はようやく体が自由に動かせるようになり自分の足で部屋を出た。


 サメの仮面と民族衣装を身に付けた海兵達が僕に挨拶しながら作業する。

 厳ついけどかっこいい。


 ヤブイヌ達が左腕に赤い布を巻いているのを見て声をかけることにした。


「みんな左腕の布はどういう理由でつけてるの?」


「カシラとお揃いにしたくてさ、どうだい?」


 そう言われて左手首の紅玉の腕輪を見てはっとなった。


「なんだか照れちゃうな、でもすごく嬉しいよ」


 そう言うとヤブイヌ達はみんな嬉しそうに笑った。


「俺たちに親しくしてくれる他人ってカシラが初めてなんだ、これからもよろしくな」


「こちらこそ」


「なんだかいよいよ俺達の海賊団って感じがしてきたな」


 作業に戻ったヤブイヌ達を見ているとベイルが声をかけてきた。

 応急的ではあるが整備も進んで船の見栄えも良くなってきたし、たしかにみんなも海賊団って雰囲気で纏まってきた気がする。


「なんだかワクワクしてきますねぇ」

 マックスが目をキラキラさせて言う。


「お前さんディアナ公国兵から籍抜けたわけじゃないのにいいのかにゃ」

 リガーがやれやれといった様子を見せながらつまみ食いしている。


「こうなって来るとこの船にも名前が欲しいね」


「この船の側面にパラディオンって書いてあった、多分この船の名前じゃないか?」

 ガフールさんが僕に言った。


「パラディオン、戦と勝利の女神アテナの像って意味だね。縁起のいい名前だ」


「海賊団の名前はどうします?」

 マックスがウキウキしながら尋ねる。


「うーん、こういうのって考えるの難しいな。みんなはなにか良い案ある?」


 仲間や海兵やヤブイヌ達も一旦手を止めうーんと考え込む。


「黄金のガチョウはどうだい?」

 アーバンが言った。


「黄金のガチョウっていうと童話を思い出すけど、この世界にも同じものがあるの?」


「昔のプレイヤーが持ち込んだ物語の一つとして伝わってます」


 黄金のガチョウは金のガチョウを手に入れた男が、そのガチョウに触れて手が離せなくなった人たちを連れて幸運を手に入れる話だ。

 

「この船にいるのはみんなカシラに手を出して離れられなくなった連中ばかりだからな」


「言えてる、丁度いいんじゃないか?」


 みんな納得した様子でうなづいてる。


「よし、じゃあ僕らはこれから黄金のガチョウ海賊団を名乗ろう。パラディオン号と一緒に新しい冒険が始まるんだ、みんな気合い入れていこう!」


「「オーッ」」


 船のみんなが掛け声をあげる。

 気持ちいい風が吹いている、輝く海に広大な水平線。

 未知の世界への旅が始まる、僕はこれから始まる海の冒険に胸が躍っていた。


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