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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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726回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 512:海賊団の長として

「雄馬、ヤブイヌと海兵が喧嘩してて手に負えないにゃ!早く戻るにゃ」

 リガーにそう言われ船に戻ると、ヤブイヌ達と海兵達が今にも取っ組み合いになりそうな雰囲気になりながら口論していた。


「みんなちょっと待って、話を聞かせて。どうして揉めてるの?」


「彼らが我々とは一緒にやっていけないと言うんだ」


「モンスターが人間に対してそう思うのは当然だろうが」


「この通り、話にならん」


「んだとぉ!?」


「まぁまぁ、少し頭を冷やそうぜ。お前ら軍港に攻めこむ時は協力しあってたのにどうしたんだよ」

 ベイルは少しなれた様子で仲裁に入った。

 ベイルに諭されたヤブイヌ達は複雑そうな顔をして言い淀む。


「あの時はカシラの仲間が危ないってんでがむしゃらだっただけだからよぉ…」


「ありがとう、おかげで助かったよ」

 ヤブイヌの言葉にそういって笑うと、彼らはなぜかみんな顔を赤くしてアーバンが苦笑した。


 ヤブイヌ達の様子に警戒したベイルはおぶった僕を彼らから隠し牙を剥いて唸り声を上げた。


「こらこらベイルも落ち着いて」

 かろうじて動かせる指で彼の脇腹をかくと、ベイルは鼻を鳴らして威嚇をやめた。


 ヤブイヌのリーダーのアーバンと海兵のリーダーのガフールさんは少し距離を置いて静観している。

 お互いに仲間達のガス抜きと関係性の置き場所を見定めようとしているらしい。


 ようするに二つのグループを総括している僕の出方を伺ってるって所みたいだ。

 やってやろうじゃないの。


「とりあえずどうしてそう思うのか話してみて」

 僕は興奮度合いの高いヤブイヌ達に話を振る。


「モンスターを殺して楽しむために軍人なんてやってる奴らなんか信用できるかよ」


「なんだと」

 海兵が癇に障ったようで顔を顰めて反論しようとした。


「ストップ!冷静に。なんで反論したくなったのか伝わるように話してみようか」


「ここにいる誰もが戦争は嫌いだ。理不尽な暴力に大切なものを奪われないために志願したものたちばかりだからな。それを殺しを楽しむためだなんて言われたら腹が立つだろ」


 ヤブイヌ達は海兵の言葉を聞いて意外そうな顔をしてヒソヒソと会話する。


「それって俺たちと同じだな」

 などと話し合った後、少し柔らかい感情の顔をして海兵達を見た。


「みんないろいろ思うところはあるかもしれないけど、せっかく縁があってこうして仲間になったんだ。楽しく行こうよ」


「カシラがそう言うなら…」

 ヤブイヌ達はそういうとお互いの顔を見てうなづき合う。


「君が言うなら我々も異論はない、楽しくというのは少し難しいかもしれんが…」

 海兵達はどことなくガフールさんを気にしながら言った。


 部下達の視線にガフールさんはうなづいて応えた。

 どことなく元気がなさそうだ、これまでの彼らの事情を考えれば無理もない。

 

「はえーうまくまとめたな雄馬」

 ベイルは関心しながらそう言った。


「大事なのは立場と考えと目的だからね、お互いが相手を尊重して話し合うなら大抵のトラブルは解決できるんだ」


 ヤブイヌの一人が何か大きな木箱を持ってきて中身を海兵に投げて渡した。


「…鮫の仮面か、なんだこれは」


「海賊やってる獣人は人間嫌いが多いんだ。コイツで顔隠しとけ」


「ふん」


「礼くらい言えよな、ケッ」


「うーん仲良しまではまだかかりそうー」

 とほほとそう呟きながらも、歩み寄りを始めた彼らを見て僕は思わず微笑ましい気持ちになった。


-----


 その頃クガイと海賊は紅蓮地獄の方から一連の出来事を観察していた。


「モンスターの海賊と人間の海兵を上手く仕切ってる、人間にしちゃやるだろあいつ」


「まぁボロが出るまでは何も言いませんが」


「ったく可愛げがねぇなお前は」


「キャプテンの物好きにはいつも痛い目見せられてるんでね」


 そういう海賊にクガイは両手を上に上げて首を横に振って見せた。


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