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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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725回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 511:力の代償(2)

 クガイの後に続いて木板の橋を渡り紅蓮地獄の甲板に渡ると獣人海賊達が物珍しそうな顔で僕達を見た。


 クガイはベイルにおぶられた状態の僕をしげしげと眺める。


「なんだよ」

 ベイルが気まずそうに言うのも気にせず彼は唸りながら僕の体をあちこち触りながら確かめる。


「大罪魔法の使いすぎだな、あれだけ派手にやればこうもなるだろ」

 そう言って彼はニヤリと笑う。


「まさかこんなことになるなんて」


「大罪魔法は人間が使うには負荷がデカすぎるからな、普通の人間が使えば一撃で五体が千切れ飛んでもおかしくない」


「なんてものを僕に託したんだ……」

 と僕はブルーノとおじいちゃんを思い浮かべ白目を剥く。


「まぁ実際お前はそうはなってないし、行けそうだなとは思ったんじゃねえの。それにお前の場合大罪魔法の適性だけじゃないだろ?」


 クガイはそう言うと腰に下げた二本のオブジェクトに触れる。


「お前の近くにいるとコイツらが騒ぎやがる」


「オブジェクト、だよね」


「ボレアースとゼフィロス、氷と風のオブジェクトだ。お前の持ってるオブジェクトを警戒してる、こんなの初めてだぜ」


 ポーチの中の琥珀のダガーは正体を隠すかのように静かだ。


「どんな力があるんだ?」


「植物操作能力、だと思ってたんだけど、命そのものに直接干渉する力があるみたい」


「聞いたこともない力だ、さすが魔王候補者ともなると四秘宝だけじゃなくオブジェクトも特別ってわけか」


 彼言葉にベイルが警戒する、周囲は海賊達に囲まれていた。


「なぁ雄馬、コイツらの狙いってやっぱり」


「違うといいんだけどね」

 クガイが追っているのは海の魔王四秘宝『蒼穹氷晶』。

 僕の持っている魔王四秘宝『紅玉の腕輪』『幻影水晶のイヤーカフ』を欲しがってもおかしくはない。


「なぁあんた、うちのキャプテンが海賊だって事いつ気づいた?」


 海賊の一人が僕に尋ねる。

 今その話?と疑問を抱きながら僕はとりあえず素直に返答することにした。


「最初に自己紹介された時から海賊っぽいなって……」


 海賊達がわっと声を上げて騒ぐ。


「ほらみろキャプテンにカタギの振りなんてできるわきゃねぇんだ!」


「うるせーやい!」

 クガイは不貞腐れて腕を組みそっぽを向く。


 帽子に金を詰め込まれてホクホクな海賊と、悔しそうに金や酒瓶を突っ込んでいく海賊がやいのやいのしている。


「こいつら俺の嘘がバレるかバレねえかで賭けしてやがってよぉ」

 クガイは不満そうに言った。


「サンキューな、アンタのおかげで稼がせてもらったぜ!」

 と海賊にいわれ体を叩かれた。


「ひぎぃっ!?そ、そりゃどうも」


「にしてもアンタらやるねぇ、たった船二隻と二十人で軍港殴り込みなんて。絶対に全滅してると思ってたぜ」


「実際危なかったですけどね、クガイとみんなが来てくれて助かりました」


「まぁできる男は全体が丸く収まる様に様子を見てから勝負をつけるもんだからよ、タイミングバッチリだったな!」


「よく言うぜ、こいつが軍港にカチコミ行ったの知ってめちゃくちゃ慌ててたじゃないですか」


「馬鹿野郎それは言わないって約束しただろーが!」

 クガイの反応を見て海賊達はゲラゲラ笑う、なんとなく雰囲気の良さを感じた。


「ウチのキャプテンからかい甲斐があっておもしれぇだろ、お前もやっていいからな」


 そう言われても困るけれど、気持ちが嬉しくて僕はつい笑顔になった。

 それと同時に軍港にいた海賊達を助け出せたことに実感が湧いてきて、少し胸が暖かくなった。


「蒼穹氷晶目当てに手を組む約束だ、お前も華々しく海賊デビューしたことだしこれからよろしくな!」

 クガイがそういって笑顔を見せると、彼のそばにいた目つきの冷たい海賊が不満げな顔をして口を開く。


「人間みたいに弱っちい奴が俺達と一緒なんて足引っ張られるだけだぜキャプテン。それにこの貧相な体つき、役に立つとは思えない」


 確かに満身創痍でベイルにおぶられてる状態じゃ言われても仕方ない、僕は彼の言葉に笑顔を返す。


 海賊は冷たい目で僕を見るとどこかに行ってしまった。


「気にならないのか?言い返せばよかったのに」

 ニコニコ笑いの僕を見てベイルが不思議そうに尋ねる。


「みんなを助け出せたのが嬉しくて」


「やれやれお前は俺が世話しないと危なっかしいぜ」

 ベイルはため息混じりにいうと小さく笑った。

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