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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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724回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 510:力の代償(1)

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 軍港からの救出劇の後、僕は幽霊船の船室に籠っていた。


「ひぎぃっ!?」


 理由は少しでも体を動かそうとすると激痛が走り、とても動ける状態じゃないからだ。

 寝ていると痛みが軽くなるんだけど、もう大丈夫かな?と思い動こうとする度に全身がバラバラになるような苦痛で悲鳴をあげてしまう。


「もー大人しくしてろって、悲鳴あげられる度にびっくりして針で指を刺しそうになるんだぞ」


「ごめんね」


 ベイルはベッドで寝ている僕の横で呆れ顔をしていた。

 その手には僕の服、ほつれや破れを裁縫で直してくれているのだ。


「気になるか?」


 僕の視線に気づきベイルは服を広げて見せてくれた。

 縫い跡がほとんど分からない見事な腕に僕はおお〜と声を上げた。


「元から破れてなかったみたいだ、器用なんだね」


 僕の言葉にベイルは照れ笑いした。


「俺たちハイエナ族は家事も戦いも全部仕込まれるんだ、惚れ直したか?」


「ベイルの顔をもっと近くで見れたら惚れ直すかも」


 ベイルは僕のそばによると頬擦りをして頭を撫でてくれた。


「雄馬って意外と甘えん坊なんだな」


「ベイルといるとこうしたくなるんだよ」

 そう言うとベイルは顔を赤らめてれくさそうに頭を掻く。


「俺そんな癒し系か?」


「優しいからね」


「そうか、へへへ。雄馬に言われると悪い気しないなぁ」


 ベイルはひとしきりにやけた後でスッと水をさされたような顔をした。


「いつまで何隠れて見てんだ?」


 彼のその言葉に外窓から見ていたヤブイヌ達がすっ転び、少し隙間が空いていた扉が閉められた。

 ベイルが扉を開いて外にいたヤブイヌ達を睨むと彼らはそっぽを向いて口笛を吹く。


 呆れ顔をしていたベイルがピクリと耳を立てて一方向を見る。

 ヤブイヌ達も一斉にブーメランを引き抜き扉の前を固めた。


「おいおいどいてくれよ、とってくやしねぇって」

 クガイが来たらしい、彼の声がした。


「みんな通してあげて」

 そう言うとベイル達はクガイを警戒しながら道を開けた。


「話があるんだがいいか」

 僕は彼にうなづいてベイルを見た。


「ベイル、お願いしてもいい?」

 そう言うとベイルは僕をおぶってくれた。


「お前らのカシラちょいと借りるぜ」

 クガイは余裕のある笑みで自分を警戒するヤブイヌ達に言って部屋を出る。


「行ってくるよ、後よろしくね」

 そう言うとヤブイヌ達は心配そうな顔で紅蓮地獄の甲板に向かう僕を見送ってくれた。

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