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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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721回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 507:凶刃

 艦隊はこちらよりも先に出航した海賊達の船を狙って攻撃しているようだ。

 船の動きから見て海賊達はあえて自分達に狙いを引きつけようとしているらしい。


「あいつら自分たちが盾になって俺たちを逃すつもりか」

 海賊達に何もできない自分が悔しいのか、ベイルが顔をしかめて言う。


「出航を急ごう」

 ヤブイヌやみんなが僕を見た。


「みんなを助けるんだ」

 僕の言葉にヤブイヌ達はニヤリと笑い応と答える。


 もう自分のために誰かが犠牲になるのはうんざりだ、僕らは船を全速力で前に進める。


 艦隊が僕らの船に狙いをつけ一斉射撃を開始した。

 僕は船首に立ち、大罪魔法を乗せた斬撃を放つ。

 巨大な衝撃波の刃が砲弾を粉砕し海を割り、艦隊の一部を海の底に叩き落とした。


 海賊達はまだ僕ら盾になろうと動く。

 僕は横薙ぎに山刀を振るい、控えめな衝撃派で海賊達の船の進路を変え、無理やりこの海域から離脱させる。


 木の砲弾を海賊を追跡する船の前に落とし、超重力で渦潮を発生させ五隻沈めると、艦隊の注意は一斉にこちらを向いた。


「あわわわ、連中こっちくるにゃ!」

 震え上がるリガーが道を殺すが、出力が足りないのかごく一部しか進路が逸れなかった。


 相手の砲門がこちらに向き切る前に退路を確保し逃げ出さなければおしまいだ。


「ふんぎぎぎぎッ!!」

 ベイルが船の加速度を操作して退路に向かい船を最速で動かす。


 僕は衝撃の斬撃を乱発して艦隊を減らすが、それでも膨大な敵戦力は僕らに対する包囲網を展開していく。


 敵の大砲による攻撃が始まり、その余りの量に僕とベイルの力では防ぎきれず、船がボロボロにされていく。


「負けてたまるか!」


 次の一撃を放とうと山刀を振るが衝撃波が出ず、全身から力が抜け僕は血を吐いた。

 木の砲弾の重力も使えない。

 ベイルも力を使いすぎて気を失ってしまった。


 敵艦が僕らの船に横付けし、海兵達が乗り込んでくる。


 仲間達が海兵と戦うが敵は増えるばかり。

 僕とベイルを庇いながらの多勢に無勢、僕らはついに甲板の隅まで追い込まれてしまった。


 海兵に守られながら、処刑場にいた貴族の男が邪悪な笑みを浮かべて姿を現した。


「あの男をここへ」


「はっ」

 貴族が僕を指差し、海兵達はそれに従いみんなを退け僕を貴族の前に引き摺り出した。


 貴族の男は腰に下げていたサーベルを引き抜くと、上段の構えで僕の首めがけてそれを振り下ろした。

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