718回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 504:御礼参り
留置所に向かい走りながら僕はベイルに声をかける。
「無茶させたけど大丈夫?」
絶技の使いすぎはベイルの心を消失させる恐れがある、あまり無理はさせられない。
そんな僕の心配をよそにベイルはケロッとした顔をしてちからこぶを作ってみせる。
「自分でも驚くくらい平気だぞ、元々かかってる力を倍化させるのは負担かかんないみたいだなぁ」
砲弾は重たいし、軌道をずらすだけで良かったのが幸いしたらしい。
ガフールさん達とヤブイヌ達は海賊船と幽霊船の二隻で残りの軍艦の注意を引きながら沖に向かった。
これで大分軍港の人員は削れたが、それでもゼロではない。
留置所に向かう僕らに武装した海兵達が集まってきた。
「おいおいおい」
ベイルが目を白黒させている。
闇ギルドやディアナ公国がこの地方で敵視されない様に下手な動きはしないでおこうとおもっていたけど、シラクス国を他国に売ろうとしてる逆賊が相手なら気遣いは無用だ。
「大盤振る舞いでお礼参りと行きますか」
琥珀のダガーで軍港全体に無数の筍を生やし重力地雷にして起爆させた。
軍港の施設が次々に崩壊し、海兵達が騒ぎ出す。
「しまった、コイツらは揺動か!?」
海兵達が戸惑う中、彼らの頭の中の何人も攻めて来てるという錯覚を幻影水晶の力で後押しして混乱状態にする。
海兵の包囲網が分散したがまだ足りない、僕は道を阻む海兵を蹴散らすことにした。
衝撃の大罪魔法を足の裏に、一瞬で距離を詰めてあびせ蹴りに衝撃波を乗せて五人吹き飛ばし、手のひらに衝撃波を集めて放ち五人を壁に叩きつけた。
周囲を囲まれ一斉射撃が襲う。
衝撃を使い10mほどジャンプし、空中に衝撃波を出し急速落下、地面に拳と共に衝撃波をぶつけて周囲の海兵を吹き飛ばした。
戦いながら生命力感知で留置所内にリガー達がいるか探知する。
「いたか?」
「もう処刑場に連れて行かれたみたいだ、急がないと」
「処刑場まで距離があるな」
ベイルが苦々しい顔をする。
「みんなに力を貸してもらおう」
「みんな?」
僕は琥珀のダガーで植物を媒介にして重力を発生させ、留置所を崩壊させた。
「おいーッ!?」
ベイルが素っ頓狂な声を上げた。
「中にいる海賊達まで巻き込んでどうすんだよ!」
突っ込むベイルに視線で留置所の方を見るように促す。
崩れた瓦礫の隙間から、無傷の海賊達がゾロゾロと出てくるのが見えてベイルは困惑する。
「竹でフレームを組みながら、海兵は閉じ込めて、海賊はみんな出てこられるように崩したんだ」
「んなアホな」
キョトンとしながらもベイルは次々海兵を蹴散らしていく。
出てきた海賊達は気を失った海兵の装備を奪いこちらに集まってくる。
「あんたならきっときてくれると思ったぜ大将!」
「随分と派手にやらかしてんな、軍港丸ごと潰しちまうつもりかい?」
「みんなお願いがあるんだ」
「わかってらぁ、お仲間を助ける手助けだろ」
「連中は処刑場だ、急げばまだ間に合う。ここは俺たちにまかせていってくんな!」
海賊達は笑顔でそう言うと、集まってくる海兵達を迎え撃ち始めた。
「みんなありがとう!」
そう言うと僕はベイルと処刑場に向かい走る。
途中からベイルを脇に抱え、衝撃波を足に纏い地面を抉りながら爆速で進み。
前方に超重力植物を生み出し、進行方向に落下しながら更に加速する。
「うわっわ!!ぶつかるぞ雄馬!!」
僕は拳に衝撃波を集中させ、処刑場の壁を吹き飛ばし中に飛び込んだ。




