717回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 503:再び軍港へ
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それからしばらくの事。
軍港は監視塔から入った連絡でざわついていた。
軍港に近づいてくるブラッドレイ、そしてそれが拿捕した幽霊船が一隻。
誰の目から見ても無謀な任務で敵艦を拿捕して生還するなど本来あり得ないことだった。
元老院派はそんなことはあり得ないすぐに沈めるべきだと主張し、ガフールに信頼を置く者たちはそれに反発し騒然となった。
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軍港から軍艦五隻こちらに来るのが見える。
「おい、雄馬バレたんじゃねえのか?」
ベイルが心配そうに耳を伏せながら言う。
「うーんどうだろう」
僕は石の上で燃やした木から出る煙が螺旋を描いて上るのを確認するとガフールさんを見た。
「様子見と言ったところだな、こちらに接触し状況を見て攻撃するか判断するつもりだろう」
彼はそう言った。
たしかにフリゲート艦一隻に残り四隻は砲列が二層ある戦列艦だ。
船の動きから見ても四隻の砲門がこちらに向くような形で陣形を取っている。
フリゲート艦はこちらの様子を見るために近づいていると見て間違い無いだろう。
「判断は迅速に行うべきだ」
ガフールさんが少し緊張した様子で言った。
フリゲート艦が近づき搭乗員がこちらの船の偽装に気付き慌ただしく指示を出し始める。
「雄馬!」
「もう少し」
風は気圧の高いところから低いところに流れる。
気圧は煙がまっすぐ上がれば高く、螺旋を描けば低い。
敵艦が狼煙を上げた。
それと同時に風が吹く、読みどおり追い風だ。
「よし、偽装解除。大砲撃て!」
僕は海賊船をブラッドレイに偽装していた木の板を琥珀のダガーで海に捨てた。
海賊船は大砲を上空に向けて撃つ。
琥珀のダガーで作った木製砲弾は上空で破裂し、その破片に大罪魔法で超重力をかけ周囲の軍艦を全滅させた。
その様子を見ていた軍港側で警戒の鐘が鳴らされ、海兵が軍艦に乗り込み次々と出航しだした。
「ガフールさん」
僕の言葉に彼はうなづき全員に大声で指示を出す。
「総帆展帆!全速で突っ切れ!!」
ガフールさんの指示を受け船の帆が全て開き、追い風を受けて急加速する。
風をはらんだ帆の力でマストがミシミシと軋む。
僕らの船を取り囲んだ軍艦による一斉掃射。
砲弾はベイルが重力加速度を加速させて落とし、僕は引き続き木の砲弾を作って超重力破片で敵船を削る。
敵船が前方に割り込み進行を阻もうとした。
「カシラぁ!どうする!?」
「そのまま突っ込んで!」
僕は海賊船の衝角に大罪魔法で衝撃波を纏わせる。
船の前方の海が衝撃波で熱を帯び蒸発して夥しい量の煙を出す。
温度の上がった水の粘性が下がり船がさらに加速、目の前に立ちはだかる軍艦を衝角が真っ二つに打ち砕いた。
「すっげぇ……」
ヤブイヌ達は自分たちの船がした事に驚き目を丸くしている。
軍港に近づくと船をドリフトのように岸に近づけ、大砲を発射。
僕とベイルは船を飛び降り、ベイルの絶技を使って砲弾に乗って留置所に向かって飛んだ。
軍港に残った海兵の数は少ない、ここまで予定通りだ。
みんなを絶対に助け出す。
その決意を胸に僕らは軍港に上陸した。




