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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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713回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 499:幽霊船と食人鬼

「そろそろ目的の海域だぜ」

 アーバンに言われて僕は望遠鏡を覗き込む。

 水平線の端が僕のいた世界とは違い少し上に向いている。

 

「だだっ広くてどこみりゃいいんだかわかんねぇ」

 ベイルが呟きながら辺りを見回している。


 大砲の音がしてそちらを見ると、ガフールさん達のブラッドレイの船影が見えた。

 ブラッドレイは骸骨旗をつけた三隻の幽霊船みたいな船に取り囲まれ襲撃されているようだ。


「あわわ、こりゃ不味い……。グールだ!グールがいるぞ!!」

 幽霊船を見たヤブイヌ達が騒然となる。


「グールって何?」


「こっから南にある邪神が支配してるっていう魔の海域に入り込むと、そこから出られなくなって飢えと恐怖で気が狂って、手当たり次第他の船を襲って船員を食うグールになるんだ」

 アーバンは淡々と説明するが、他のヤブイヌ達は恐怖で震え上がっている」


「グールになるととんでもない身体能力になる、俺たちが相手できるような奴らじゃねえ」


「こっちに気づかれる前に早く逃げようぜ、な!」

 ヤブイヌ達が口々に僕を説得にかかる。


「じゃあ僕とベイルでいくよ」


「なんだって?」

 僕の言葉にヤブイヌ達は目を丸くした。


「二人であいつらと戦うってのか?」

 アーバンも困惑した表情で言う。


「いけるよね?」


「雄馬とならやってやるさ」

 僕の言葉にベイルは景気よく答え、装備した鋼鉄の爪を打ち鳴らしてみせた。


「とても正気とは思えねぇが、おもしれぇ」

 アーバンはニヤリと笑う。


「おいアーバン、まさか行くなんて言わねえよな」

 それを見たヤブイヌが慌てて彼を嗜めようとした。


「そのまさかだ、見せて貰おうぜ魔王候補者の実力って奴を」


「お前はもっと慎重な奴だと思ってたんだが……」

 ヤブイヌは顔に手を当て首を横に振った。

 他のヤブイヌ達も一様に「まじかよ」などと呟きながらため息をついた。

 おそらくこうなると彼はテコでも方針を貫くタチらしい。


「海賊をやるって言い出したあたりで気づくべきだったな、さあやるぜ!」

 アーバンの号令でヤブイヌ達は一斉に作業にかかる。


 帆の角度を調整、開き方を全開に。

 面舵をとって僕らの海賊船は全速力で幽霊船に向かった。

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