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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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712回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 498: 戦いの基本

 海路を行く中、なんだかベイルが居心地悪そうにもじもじしていた。


「どうかしたの?」


「なんかよぉヤブイヌ連中がしきりに俺を見てくるんだよなぁ……」


 そう言われて周囲を見ると、たしかにヤブイヌ達がベイルを不思議そうに眺めながら作業していた。

 僕の視線に気づくとみんな顔を背けて作業を続ける。


「なんだろ?」


「ハイエナ族の生態的にあり得ない組み合わせだからな、あんたら」

 アーバンが僕らに声をかけた。


「ハイエナ族の生態……ああ、あれかぁ」

 ベイルは首を傾げた後に納得して手を叩く。


「ベイルが忘れちゃダメでしょ」

 僕は思わず苦笑した。


「ハイエナ族は群れからはぐれると弱って死んじまうのに、そいつは平然としてるのはなんでだ?」


「そいつって言うな」

 ベイルは不貞腐れる、何度言っても彼らは僕らの名前を覚えようとしないのだ。


「俺と雄馬はつがいなんだ、だから俺は雄馬がいればどこにでも行ける」


「つがい?男同士はハイエナ族だからわかるとしても人間と?」

 アーバンは意外そうな顔をした後、苦笑いをする。


「お前変わってるな」


「変態を見るような目でみやがってよぉ。雄馬ぁこいつにもいつものアレやってくれよ、指うねうねのやつ」


五指触手(ファイブフィンガーテンタクルズ) ?」

 ベイルに言われて指をうねうねさせると、それを見たアーバンが毛を逆立てて「ヒッ」と小さな悲鳴を出した。


「本能的にわかるだろぉ?これのヤバさが。一度されたら病みつきだ、お前もされてみろよぉへへへ」


「い、いや、いい。俺は遠慮しとく……それより訓練してくれよ、今の作業が終わればしばらくみんな手が空くんだ、な?」

 話を逸らすのに必死な様子のアーバンを見て僕は少し笑う。


「うん、じゃあみんなを呼んでくれたら始めるよ」

 僕の返事を聞いて彼はほっと胸を撫で下ろし、ヤブイヌ達の様子を見て「みんな集まってくれ」と声をかけた。


 ひとまずヤブイヌ同士で戦う様子を見せてもらうことにする。

 悪くはないけど動きに無駄が多い、ヤブイヌ達が我流で身につけた戦い方なんだろう。


「もう少し移動速度を上げると攻撃が読まれにくくなるよ。動く時は足で蹴って移動するんじゃなく、足で引っ張って移動するんだ」

 僕はそう言うと甲板に飛び降り、山刀を逆刃で持つ。

 ヤブイヌ達にかかって来いと手でジェスチャーすると、彼らは一斉に襲ってきた。


「重心を崩して反射で出た足で床を蹴って体を引いてこう」


 一歩踏み込み、左右のヤブイヌの剣を山刀で弾き飛ばしつつ、さらに一歩進み距離を詰め、山刀を前方のヤブイヌの首元で寸止めする。


 それをヤブイヌ達が一歩動く間に全て終わらせた。


「お、おお」

 ヤブイヌ達は動揺しながらも感嘆した様子で声を上げた。


「戦いの基本は効率化した動きにある。僕が君たちのブーメラン攻撃に対応できたのも、君達が動かずに投げてて軌道がわかりやすかったからなんだ。より効率的に敵が対応しにくい動きを心掛けてみて」


 僕がそう言うと彼らは僕の動きを真似しながら組み手をし始めた。


「意外と素直だなこいつら」

 僕のそばにきたベイルが呟く、少し嬉しそうだ。


「みんな向上心がある、きっと強くなるよ」

 僕の言葉を聞いていたアーバンは僕を見つめて少し笑い、ヤブイヌ達の訓練に参加しに行った。


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