674回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 467:噂の男
予定時刻に帰港した船に向かうと、モーガンが船上の魚人の一人を見て声を上げた。
「おーいっダルゼム!」
その声に反応した魚人が彼を見ると手を振り船を降りてきて親しげな顔でモーガンに声をかける。
「いやぁひさしぶりギョね、何のようだいキャプテんぐっ!?」
モーガンが突然ダルゼムの口を塞ぎ、彼はダルゼムの耳に小声で何かを囁くと、ダルゼムは何か納得した顔でうなづいた。
「これで誤魔化せてると思ってるのかにゃ?」
リガーは呆れ顔をしながら小声で僕に言う。
「なぁ雄馬あいつかいぞんがくっく!?」
ベイルが大声で言いかけ僕は慌てて彼の口を塞いだ。
「かい……なんだって?」
「快男児だなぁ!って。そう言いたかったんだよねベイル?」
ベイルは僕の顔色を見ると、僕に合わせて首を縦にこくこくと振った。
「階段?」
「快男児、雄々しく清々しい奴って意味ギョ」
「なーる、それならまさしく俺のことだなハッハッハ!」
「馬鹿でよかったにゃ……」
「リガー」
小声で呟くリガーの尻尾を軽く握ると、彼はンギィ!?と毛を逆立てて硬直した。
ダルゼムが何やら僕をじろじろ観察し、腕輪とイヤーカフに目を止めて納得したようにうなづく。
「はーなるほギョ、彼が噂の……」
「噂?」
「魔王候補者の山桐雄馬ギョ?人間の魔王候補者って話で有名ですギョ。彼あなたのファンなんですギョ」
「余計なこと言うなよ、恥ずかしい」
モーガンは顔をあからめダルゼムの肩を叩いて吹き飛ばし、吹っ飛んだダルゼムはきりもみながら木箱の山に突っ込みそれを粉砕した。
「お、おい大丈夫か?」
ベイルがダルゼムに声をかける。
「ギョギョーッ、いつも加減を知らないんギョ……」
なんともなかったかのようにダルゼムは起き上がり戻ってきた。
「さすが海の男は鍛え方が違うということか……ッ」
マックスが感慨深そうに呟く。
ニコニコしながらモーガンを見ていると、僕の視線に気づいた彼は腕を組んで照れくさそうにそっぽを向いた。
「えへへ……」
ガタイの良いシャチ獣人のモーガンが照れてるのはギャップ萌えな感じでかわいい。
「雄馬またすげえ顔してるぞ」
とベイルに呆れられてしまった。
そんな事をしているとなにやら魚人達が騒ぎ始めた。




