673回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 466:ダルゼムを探せ
「探しに出たはいいものの……」
「魚人って見分けがつかないよな」
陸を走る魚群の中で僕とベイルは途方に暮れていた。
魚人達はギョッギョッと言いながら仕事をしている。
「案ずるより産むが易し、とにかく聞き込みしてみよう」
地道に聞いて回っていると鐘の音二回が三セットに一回鳴らしの七点鐘が鳴った。
もう三十分経ってしまったらしい。
みんな忙しく働いているため話しかけても無視されることが多く気持ちが少し焦ってくる。
「なぁ雄馬あれ」
ベイルが指差す方を見ると漁師に指示して魚を積ませている商人風の女の子が見えた。
十五才くらいに見えるが、テキパキと仕事をしている。
「なんか偉そうに指示出してるしあいつなら知ってそうじゃね」
「そうだね、聞いてみようか」
僕は彼女に近づいて声をかけた。
「あのすみません、人を探してるんです。船乗りのダルゼムって魚人さんなんですが」
僕の言葉を聞いて女の子は片眉をあげ不愉快そうな顔をした。
「身体的特徴や所属の漁船の名前は?」
「知らねぇけど」
ベイルが答え、女の子は首を横に振った。
「名前だけ聞いてわかるわけがないでしょう。そういうことはそこの組合窓口で聞きなさい。今無駄にした時間でいくら損失が出たかわかりますか?二度と話しかけないで欲しいものですね」
表情や声色は淡々としているが怒り心頭といった様子でそう言うと、彼女はそっぽを向いて品定めと指示出しを再開した。
「なんだあいつ感じ悪いな」
「どうすればいいか教えてくれるあたり悪い人じゃないんだろうけどね、行こうか」
組合窓口でダルゼムの居場所を聞くと、僕はイヤーカフでみんなに連絡して合流し、ダルゼムの乗った船が戻ってくるのを待つことにした。




