670回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 463:海の男モーガン
「あんたら蒼穹氷晶狙いか?それなら俺に一枚噛ませてくれよ」
そう言うとシャチ獣人はどっしと音をさせて僕の隣に腰を下ろした。
筋肉ではち切れそうな身体だが、近くでよく見るとバランスの良い筋肉のつき方をしている。
剣闘士のそれに近い戦う男の体だ。
「あなたは?」
僕は男に尋ね、リガーがそれとなく周囲を探り、ベイルがすぐに戦える姿勢に入る。
「俺はモーガン、長いこと蒼穹氷晶を追ってる冒険家だ」
リガーはちらりとこちらを見て問題がないことを表情で示し食事を続けた。
ベイルは警戒を続けている。
モーガンはそれを知ってかしらずかベイルを一瞥してニヤリと笑う。
「まぁそんなに固くなりなさんなって。俺もこの店が気に入ってんだ、出禁になるようなこたぁしねぇーよ」
左腕がチクリと痛む。
彼が腰に下げている二本のサーベルはオブジェクトらしい。
それもかなり強力な物だ。
「気になるかい?」
モーガンは僕に尋ねた。
「モーガンさんが船を持ってるかどうかの次くらいには」
僕の言葉を聞いてモーガンは大袈裟なジェスチャーで残念そうにした。
「生憎この間の嵐で沈んじまってな、だがあてならある」
「蒼穹氷晶を手に入れた時の分前はどうするつもりかにゃ」
「そんとき考えるってことじゃだめかい」
「なんだか良い加減なやつだなぁ、どうする」
「お願いしようかな、仲間は多い方がいいし」
「そう来なくっちゃ!」
そう言って彼は僕に手を差し出し、僕はその手に握手をする。
「僕は雄馬、よろしくね」
「ああ!これで契約成立だなっ」
モーガンはギザギザの歯の並んだ口で豪快な笑顔を見せた。




