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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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654回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 448:友情の儀式

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「お父さん!お母さん!!」

 ヘルズベルに入ってきた棄民の男女に向かいララが叫ぶ。


「ララ!」

 二人はララの姿を確認すると大急ぎで駆け寄り彼女を抱きしめる。


「ああ、ララ」


「よく無事で……」


「スモーカーさんが私を匿ってくれたの。二人とも元気そうでよかった」


「わたくしこういうの弱くてダメですわ」

 そう言いながら遠巻きにララを見つめてヨヨヨと泣くエスメ。

 その隣ではアリスが微笑みながら、どこか寂しげな顔をしていた。


「どうしましたのそんな顔して」


「少し羨ましいなって思って。私の家族この世界にはいないから」


「そっか、アリスはそうなんですのね」


「落ち着いたらメルクリウスにも帰らなきゃだし、みんなともお別れになっちゃう。だから少し寂しくなっちゃった」


 えへへと笑うアリスを見てエスメは目を潤ませる。


「んンンーッ!アリスぅ!!」

 エスメはそう言ってアリスに抱きつく。


「わっ、なにエスメ」


「あなたは一人ではありませんわー!」


「そうだよ!アリスちゃん!」

 今度はララがアリスに飛びついてきた。


「ララ、いいの?」


「うん、私は後でたくさん家族団欒できるから。今は友情優先だよ!」


「そうですわ!友情!!」


 そう言うとエスメはアリスとララの手を繋がせ、エンジンを組むように二人の手を握って輪を作る。


「どうしたの?」


 困惑するアリスにララは微笑む。


「これはヘルズベルの女の子がやる誓いの儀式だよ」


「どうやるか教えて」


「今みたいにたくさん人がいる中で、私たち仲良し!って三回叫ぶんですわ」


「えぇ……?」

 抵抗を示すアリスを見てエスメはその顔が見たかったと得意げ、ララは苦笑した。


「成功すればそのグループの友情は永遠のものになると言われていますの、必要な試練ってやつですわ!」


「アリスちゃんが嫌ならやめてもいいんだけど、どうする?」

 アリスは少し考えたが、二人の気持ちに応えたいという気持ちが湧いてきた。


「やる」


「そうこなくっちゃ!さあやりますわよ。準備はよろしくて?」


「えっと、なんだか人目が恥ずかしいけど……」

 ララが周りが自分達を見始めた事に戸惑いだした。


「ええい、いくよアリスちゃん!」


「燃え上がれ私の女子力!」


「せーのっ」


「「「私たち仲良し!私たち仲良し!私たち仲良し」」」


 アリスが恐る恐る目を開けると周りの人たちが温かい目で三人を見て笑っている。


「や、やり遂げましたわ」


「これやっぱり恥ずかしいだけだよぉ」


「アリスはどう思いますの?」

「私も気になる!」

 エスメとララは目を輝かせ、アリスの言葉を待った。


「思い出になったと思う、ありがとう二人とも」


「お隣国だし、会いに行くねアリスちゃん」


「私も時間が取れるようになったら絶対に会いにくる、だから私の事忘れないでね」


「うふふー、当然。だって私達の友情は永久不滅ですもの!」


 アリス達を見守っていた周囲の人々から温かい拍手が沸き起こった。

 アリスはみんなに会釈しながら胸に手をあてる。

 もう彼女の心には寂しさはない。


 エスメとララへの感謝の気持ちを胸に、アリスはヘルズベルを出る決心を固めた。

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