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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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649回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 443:獅子の咆哮

「認識を殺し光線を散らしたか、仲間に恵まれたな雄馬」

 どことなく嬉しそうな口調でいう父さんに胸が苦しくなった。


 認識を殺す死刃、狐の尻尾、そして身に纏った雰囲気。

 黒騎士の正体はポプラに違いない。

 でもワリスの話では彼女は聖王の元でプレイヤーを管理する仕事をしているはずだ。


「ポプラ、どうしてここに」

 

「話は後です、今は戦いに集中して」

 ポプラはメイスを構え父さんを見据えたまま言った。

 ミサが僕の背中に手を当てる。


「私の最後の力預けるよ、勝って雄馬」


「ありがとう」


 父さんを見ると、異形の姿に変わり果てたその顔が微かに笑う。


 僕とポプラは左右に分かれて走り、両サイドから攻撃を仕掛ける。

 色欲の悪魔が攻撃する度にポプラの振るったメイスで空間が割れ、攻撃が逸れていく。

 そうしている間に僕は色欲の悪魔に斬撃を加えていく。


 攻撃はたしかに入っている、しかし即座に傷が回復してしまう。

 さっき切り落とした腕も再生済みだ。


「ふむ、少し邪魔だな」


 悪魔がそう呟くと、彼は翼を羽ばたかせて鱗粉のように無数の魔石を散らす。

 そしてその魔石により全方位からポプラに光線を攻撃が集中、彼女の鎧が砕け素顔が露わになった。


 直撃の間際に空間を割り致命傷は免れた、しかし彼女は傷だらけになり宙を舞う。


「ポプラ!」


 ポプラは僕にアイコンタクトを送る。

 悪魔の意識がバクルスから逸れている。


 僕はすかさずバクルスを取りに走った。

 魔石からの一斉射撃が迫るが、背中に染み込んだミサの血の力で拡散していく。


 あと一歩で手が届く。

 バクルスに手を伸ばしたその時、魔石がバクルスを撃ち抜き、聖杖バクルスは砕け散ってしまった。


「これで私を倒す手段は無くなったな」


「どうして……」


「力の発動は済んでいる、継続と拡大なら魔法で可能だ。これはもう必要ない」


 そう言うと悪魔は光輪から光線を放ち攻撃してきた。

 光線は僕らの体を引き裂き、傷口からは白い花が咲く。

 父さんの罪の象徴、母さんの好きなあの花だ。


「お前も罪で汚れているんだね、大丈夫だよ私が浄化しよう。そして二人で母さんの元に行くんだ」


 ベラやミキノと同じだ。

 大罪の悪魔の力は人の業を何倍にも強くする。  

 父さんは母さんに対する罪悪感で自分を罰することしか考えられないようだ。


 花に体力が吸い取られ、赤い霧として放出されていく。

 戦いが長引けば敗北は必至だろう。


 大罪の性質上父さんの僕の願いを叶えるという言葉はまだ有効なはずだ。

 僕らを見逃してくれと頼めばそうしてくれる。


 彼に願い全てを委ねれば僕は幸せになれるかもしれない。

 父さんと一緒に暮らす事だって叶う。

 かつて望んだ全てを手に入れることができる。


 でもそれじゃダメだ。

 今度こそ僕にしかできない事をする。

 そして護るべき全てを護らなければ。


「受け入れなさい、この変革は衆生の幸福の為。母さんやお前を苦しめた人の世の不幸を滅ぼす手段なのだから」


「違うよ、不幸なのは僕じゃない」


 僕に過去を見せたのは父さんの無意識の願いからだろう。

 誰かにわかってもらいたい、手を差し伸べてもらいたい。

 それができるのは僕だけだから、願いを託したんだ。


「僕は父さんを見捨てない、今度こそ救ってみせる!」


 そう言った時、僕の体に突き刺さっていたバクルスの欠片から小さな鼓動を感じた。


 僕の言葉に父さんは悲しそうな目をして、手をかざし光輪から光を放った。

 避けようと思った瞬間、僕は残像を残し離れた場所に移動していた。


「消えた?いやそこか」


 光輪の光が僕に迫る、また頭の中で考えただけで瞬間的に移動していた。

 今度は意図した通りの場所だ。

 バクルスの欠片の鼓動が強く熱く高まっている。

 

「プレイヤーアバターのHPは奪った、スキルは使えないはずだ、一体何をした」


 バクルスの欠片が光を放ち、風が吹き獣の姿を構成していく。

 僕には何故かそれが何かわかった。


 角を持つ勇壮な獅子。

 風のテトラモルフ、マンティコアがそこにいた。


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