648回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 442:勝機に賭けて
色欲の悪魔に放ったフレスベルグは、彼に近づいた瞬間光輪に分解され拡散されてしまった。
「色欲に対して勇気の枢要徳では相性が悪いようだ、残念だったな」
色欲の悪魔は僕にそう言った。
相性の他にもヘルズベルからメルクリウスまでの戦いとミキノとの対決で消耗が激しかった事。
それに父さんを攻撃することへの僕の迷いが無意識に力をセーブしてしまったのかもしれない。
紅玉の腕輪の光が消えた、フレスベルグはしばらく使えそうにない。
でもまだだ、聖杖バクルスは魔王四秘宝の一つ。
あれを手に入れられればまだ勝機はある。
僕は琥珀のダガーで悪魔を木柱の檻に閉じ込め、蔦を伸ばし聖杖バクルスを取ろうとした。
しかし悪魔が放った魔石の欠片が空中を自在に飛び、光線を放ち蔦を焼き切った。
悪魔は光の翼を伸ばし瞬時に檻を消し飛ばし、バクルスを握り僕を見た。
『あいつに向かって走れ』
グレッグが頭の中で言った。
色欲の悪魔が攻撃に動くのを見計らいプレイヤースキル瞬歩が発動し、僕は悪魔の背後を取り山刀で一撃加えた。
空中を浮遊する無数の魔石に光線を撃たれたがHPのバリアがそれを防ぐ。
スキル 暗殺透刃 で色欲の悪魔の体を透過しながら腕を斬り飛ばすと、その勢いで聖杖バクルスが宙を舞った。
「 加速 」
僕はスキルにより身体速度を加速して走り、魔石の熱線を壁に飛んで避け、三角飛びでバクルスに手を伸ばす。
「そうくるよな」
色欲の悪魔がそう言いながら腕を上に振るうと、地面から山脈のように魔石が隆起し、僕はその攻撃の直撃を受け吹き飛ばされた。
「HPを削り切る程度にできればいいが……」
色欲の悪魔はそう言うと僕に向かい手を広げ、掌から光線を放つ。
空中でかわすことができず直撃を受けた。
瞬時にHPが全損し、光線が僕の肌を焼いた。
その瞬間空間が割れ、僕は離れた場所に移動していた。
傍に狐尻尾の黒騎士、そしてミサの姿があった。




