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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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639回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 433: 追憶の彼方から

「陽介!?何でこんなとこに」


 周囲に赤い霧が現れ出し、進行方向に無数の空まで届く巨大な紫水晶の棘が見えた。

 紫水晶の棘が地面に突き刺さり、血が噴き出す様に赤い霧を噴出させている。


 メルクリウスの領空に入ったらしい。


 紫水晶の棘から次々に霧の魔獣が生み出されて飛んでくるのが見える。

 巨大な人間の口を持つ肉の塊のようなものや、見たことのない巨大な空飛ぶムカデみたいなのもいる。

 まだ棄獣は数えきれないほどいる、それに霧の魔獣も味方してくれるとは思えない。


 巨大な霧の魔獣が全身のエラを蠢かせ赤い霧を吸い込み、全方位レーザーで棄獣を攻撃し、棄獣もそれに応戦する。

 眼下で都市が破壊され逃げ惑う人々の姿が見えた。


 混沌としていく状況の中、陽介に棄獣と魔獣が集まっていく。


「ミサ、さっきの奴陽介にもできる?」


「うん」


「じゃあ合図したら陽介を左に動かして」


 僕は高度を上げフレスベルグでパワーダイブを仕掛け、翼に槍のチャージを行う。


「今だ!」

 僕の合図でミサは陽介を左に並行移動させ、僕は棄獣が進路を変える前に炎の槍を連発で撃ち込み数体を爆発に巻き込んで撃破。


 衝突寸前にきりもみ飛行しながら爆風を発生させ敵を吹き飛ばし、大量の炎の羽根て弾幕を作り撃破した。


「すげえな雄馬のそれ」

 陽介は僕の隣に来るとそう言った。


「陽介、なんでこんなとこに。ついてきたの?」


「お前だけ行かせるわけにはいかねえだろ。ってもお前の動きが早すぎて見失って、敵に囲まれてあのザマだけどさ」

 陽介は苦笑いしながら頭を掻いた。


 殺気を感じてそちらを見ると敵の大量増援が後ろから迫って来ていた。

 前方からは棄獣の迎撃に出た魔獣が僕らに向かう板挟み状態。


「これヤバくね?」

 弱音を吐く陽介に僕は笑う。


「ここまで来たらやるしかないよ」


 巨大な霧の魔獣が弾頭型の魔獣を全方位に射出し、棄獣に弾頭が食い込み内部から爆散させていく。

 弾丸型の魔獣を僕と陽介は撃ち落としながら、大群の隙間を縫って飛行する。


「あっ!」

 陽介が棄獣の放った火球の直撃を喰らった。

 HPによるバリアで彼自身は無事だったがワイバーンが消失、敵の群れの濁流に向かって吹き飛ばされていく。


「陽介!!」

 急いで彼の元に向かうが敵の攻撃に阻まれ近づけない。

 もうダメかと思ったその時、青い冷凍光線が敵の群れを斬り裂き凍らせ粉砕。

 高速で飛来したなにかが陽介をキャッチして飛び去る。


 敵の群れの中取り残された僕に敵の攻撃が集中する。

 接近した攻撃を竜巻のような突風が巻き込み爆破、赤い霧が払われ、接近してきた魔獣達を真空波が両断し、僅かにできた隙間を縫って僕は外に出た。


「雄馬くん!来てくれたんですね!」

 僕のそばに鳥型のモンスターに乗った女の子がやってきた。

 彼女は僕の顔を見ると嬉しそうに笑う。


「君は……」

 知らない人のはずなのに、彼女を見て僕の胸は張り裂けそうになった。


「ハロー王子様、元気そうだね」

 陽介を抱えた短髪の女の子も僕に話しかけてきた。


「おわあ!?」

 彼女に放り捨てられた陽介は瞬時にワイバーンを呼び出し騎乗する。


 見覚えのないはずの二人なのに僕は彼女たちを見て胸が詰まるほど嬉しい気持ちになった。

 二人が乗っているのは鳥型のモンスター、ドルフが手配したのだろうか。


 僕の様子を見て二人は少し寂しげに微笑む。


「本当に覚えてないんだ、彼女の言った通りだね」


「今はメルクリウスを救うのが先ですよ、援護しましょう」


「了解、王子様後でたっぷりお話し付き合ってもらうから覚悟しなよ」

 そう言うと短髪の女の子は僕に投げキッスをして、後ろからくる大量の敵に二人で向かっていった。


「雄馬」

 呆然としていた僕の腰をミサが強く掴む。


「行こうぜ!」

 陽介が僕を促す。


 眼前には屍竜キャリバンの姿、そして教会も見えてきた。


「やろう、僕らでみんなを助けるんだ!」

 僕はフレスベルグの速度を加速させた。

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