635回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 429: 愚者の王
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「叔母様、降伏してください。今ならあなたを護ることができる」
フェルディナンドは呆然としているエロイーズに言った。
既に貴賓室はフェルディナンドの配下の兵達が押し寄せ、彼女には退路は残されていない。
女王に僅かに残された配下も、フェルディナンドの策略により無力化されていた。
「……降伏……護るだと?身の程をしれ小僧が!!」
そう言うとエロイーズは胸元から脈打つ魔女の心臓を取り出し立ち上がる。
兵士達が剣を抜きフェルディナンドを守るように立ち塞がった。
「散々可愛がってやった恩を忘れ、あまつさえ守る!貴様如き塵のような存在が妾を護るだなどと!!」
エロイーズは心臓を掲げ、彼女の背後に首のない屍竜キャリバンが虚空から飛来し、聞くものの精神を引き裂くような轟音をたて兵士たちを怯ませる。
エロイーズはセクトを睨む。
「人柱になる他価値がないと抜かしたな、ならば妾は今から自分の価値を証明してやる」
エロイーズの言葉に応じるように今度は何匹もの飛行型棄獣が彼女の背後に現れ、叫び声を上げながらどんどん数を増していく。
「今より妾のこの手で聖王国メルクリウスを撃滅する!妾の民に王の威光を示したのち、貴様らフォンターナ派は血縁の赤子も残さず皆殺しだ!!」
そう言うと彼女はキャリバンの首の断面に背中をつけ融合し、飛翔する。
「ワハハハハハッ見よ!これぞこの国を永久に統べる偉大なる王の姿だ!!」
エロイーズが化け物のような声でそう叫ぶと、棄獣の群れが貴賓室に一斉に火球を放ち、将冴が爆発魔法の衝撃波で相殺する。
エロイーズは高笑いしながら棄獣の群れを引き連れ、メルクリウスに向かい飛び去っていった。




