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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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628回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 422: 戦鬼達の焔舞

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 その頃アリーナでは、湧き上がる歓声の中ベラベッカとジュリアが紅蓮の炎と蒼炎をぶつけ合い激戦を繰り広げていた。


 ジュリアの炎の羽衣による攻撃が迫り、ベラベッカは体に纏った蒼炎の放射でそれを弾きつつ距離を詰める。

 ジュリアが袈裟斬りを放ち、ベラベッカはグラディウスで応戦する。


 返す刀で足を狙った下段斬撃、ジュリアは一歩引いて逆側からの斬り下ろしでそれを弾く。


「らあぁあっ!!」

 ベラベッカは突きで胸を狙う。

 ジュリアは微かに笑みを浮かべ体捌きで交わし、ベラベッカを蹴り飛ばす。

 吹き飛んだベラベッカに、ジュリアは追撃で羽衣を放つ。

 二枚の羽衣が螺旋を描き彼女を襲う。


 ベラベッカは吹き飛びながら両腕を交差し深呼吸して炎を弱め、タイミングを見計らう。


「つあ!!」


 衝突の瞬間に両腕を勢いよく開き、蒼炎を一気に噴射して羽衣をこじ開けジュリアに斬り掛かる。


「だああっ!!」


「まぁ下品な戦い方」

 ジュリアはベラベッカを揶揄うように笑いながら、迫ってきた彼女に斬撃を見舞う。


 ベラベッカはその斬撃を盾で受け流し、ジュリアの右手首の骨を握り、体捌きで隣に周り、腕を極めながらジュリアを投げ飛ばし斬撃を放つ。


 しかしジュリアは炎の帯をクッションにし剣の連続放出で反撃、生み出した剣を掴みその勢いで姿勢を立て直しベラベッカに斬りかかり彼女の頬を裂く。


 ベラベッカは怯むことなく体の軸を使った最速の体捌きで斬撃を回避し、その動きを生かした反撃を繰り返す。


「チッ……」

 ジュリアが不快そうに顔をしかめる。

 ベラベッカの反撃は少しずつ確実にジュリアに届き始めていた。


 いける、雄馬との特訓の通り回避で数手見ながらなら流れが掴みやすい。

 ベラベッカは心の中でそう呟き攻め手を加速させる。


「鬱陶しいぞ糞虫がッ!!」

 ジュリアは二人の間に炎の羽衣を滑り込ませ攻撃を防ぐと、羽衣内に無数の剣を生み出しながらベラベッカに羽衣を叩きつける。


「ウグッくぅっ!!」

 炎は蒼炎で防ぐことができたが、質量をもつ剣による無数の斬撃はグラディウスとバックラーでは防ぎきれず、ベラベッカの体はズタズタに引き裂かれた。


 ベラベッカは炎を噴き出して高く跳躍、バク宙して着地し構えを取ろうとする。

 羽衣から抜け出す事に成功はしたが、左腕に力が入らない。

 その上ベラベッカを包んでいた蒼炎も消え完全に無防備な状態だ。


「ヘッ、上等じゃねえか」

 ベラベッカはそう呟くと、唇を舐めグラディウスを構える。


 ベラベッカを思い通りにできずイラつき乱れているジュリアの心の隙、それを突く事ができればまだ勝ち目はある。

 ベラベッカの闘志は燃え上がり、眼光は燦然と輝きジュリアを射抜く。


 この状況でなぜ心が折れないのか、ジュリアはベラベッカに対し困惑していた。

 今日はジュリアが新たなる英雄として名を刻む晴れ舞台のはずだった。

 英雄に相応しい華麗なる勝利を演出するつもりだったのに。


 ジュリアが頬を拭うと、傷から流れた血に泥が混じっていた。

 ジュリアは汚れた自分の顔を想像し、激昂した。


「ぐちゃぐちゃに擦り潰してやるゥアアアーッッ!!!」


 ジュリアの感情の昂りに呼応するように彼女の右目から炎が噴き上がる。

 炎の中から蠢きながら幾重にも展開された羽衣が炎蛇の如く暴れまわり、客席を守るオブジェクト障壁を破壊しその場にいる全ての人間に見境なく攻撃し始めた。


「うわ、最悪だな。雄馬に止められた時の私ってこんな感じだったんだ」


 ベラベッカは顔に手を当て過去の自分を恥じる。

 もうあと一歩怒らせる必要があるなと感じた彼女は、ジュリアにグラディウスを突きつけて大声を出す。


「なぁ!今のあんた凄えブサイクだぜ!!」


 ジュリアの顔が引き攣り、炎蛇達がベラベッカを凝視した。

 ベラベッカはニヤリと笑い、一斉に襲いかかってきた炎蛇の群れを見据えた。


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