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613回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 408: 忍び寄る魔手
ブルーノを見送り、僕は頬を叩き来週の決勝に向けて気合を入れ直した。
「よし、明日も早いし部屋に戻ろう」
「いいことする時間無くなっちまったな」
ベイルがなんの気ない風に言う。
「あっ」
そういえば約束してたんだった。
ブルーノの事とかこれからの事で頭がいっぱいで忘れてた。
「しまった、ごめんね」
僕が申し訳なさを込めて言うと、ベイルは僕の頬を軽く撫でて笑う。
「気にすんな、ブルーノのおっさんとの話も楽しかったしな。七獣将の体験談ってなかなか聞けるもんじゃねえし」
「食いつき具合すごかったもんね」
「俺ああいう話大好きなんだよなぁ」
ベイルは嬉しそうにうっとりした顔をした。
彼のそんな様子を見てると僕まで楽しくなる。
「僕はベイルの嬉しそうな顔見るの好き」
「こいつぅ」
ベイルは顔を赤らめニヤけながら僕の肩を抱き頭をぐりぐり撫でる。
「えへへ」
そんなやり取りをしながら僕らは部屋に戻った。
翌日決勝に向けたトレーニングの途中、慌てた様子でシスティーナさんが訓練場にやってきた。
彼女は僕らにアリスとエスメが誘拐されたと言った。




