600回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 395: 番外編:遺志を継ぐ者
雄馬が異世界に来る前に経験したお話です。
連続殺人犯の父の汚名により表社会に居場所を失った雄馬は、父の古くからの友人の警察官の紹介でとある中堅ヤクザの組長に身元を引き受けて貰う事になった。
雄馬の身元引き受け人になってくれた優しい雰囲気のおじさん「斎藤道三」はファミレス好きという、ヤクザにしては一風変わった人だ。
雄馬が嬉しそうにファミレスに付き合ってくれるのを喜ぶアットホームな人だった。
食事中道三は他の客を遠い目で見つめて、何かを懐かしむような顔をすることが多かった。
彼の息子「道利」が成長し、形式だけ立派になろうとしてファミレスに付き合ってくれなくなってなと道三は寂しそうに言う。
プライドが全てに優先して大切な物を見落とすようになった彼が心配だから、同年代の視点から助けてやってくれると嬉しい。道三はそう雄馬に頼む。
快く引き受けると、彼は暖かい笑顔で礼を言うのだった。
しかし道利が方々でやりたい放題した結果、中華マフィア 瀑 岺 会 の縄張りで構成員の一人を誤って殺害するという事件が発生。
その時彼が自分の親の名前で事態を解決しようとした事で、道三と組に飛び火し瀑岺会との抗争に発展。
その騒動の最中、道三と関係のあった雄馬も組の構成員の一人として認識され、マフィアに狙われることになってしまう。
その後いくどかの衝突の後、道三が根回しを行い、組の縄張りの提供などを条件にし和解を申し入れる。
いくどかの衝突の中で瀑岺会の中で中華武術の使い手として名が売れ始めていた雄馬が話し合いの場に呼ばれる事になった。
そこで瀑岺会側からの提案により行うことになった武術勝負に雄馬が勝利して事態は収束しかける。
しかし道利が大手ヤクザとコネを持つ不良グループを使い、話し合いの場に乱入。
道三が騙し討ちをしようとしたという形で和解は破棄されてしまう。
その上大手ヤクザが道三の組をスケープゴートにし、第三者勢力が介入した瀑岺会との抗争に発展、事態は泥沼化していく。
その状況を裏から手引きしていた瀑岺会の幹部と、大手ヤクザの構成員を倒し、最終的に雄馬は黒幕であった瀑岺会側の最強の武術の使い手「ファン・ソウハ」と一騎討ちになる。
彼は瀑岺会の頭目の息子、香主として生まれながらも忌子と呼ばれ、まるでその命自体が呪われているかのように死が付きまとう人生を歩んできた。
銃で武装した集団に素手で挑み、一撃必殺の技を用いて相手側を全滅させた死神の異名を持つ男。
死と憎悪で磨かれた彼の拳と、出会いと相互理解で深まり、託された想いを背負った雄馬の拳が交差する。
勝負は雄馬の勝利で終わり、ファン・ソウハの生死は不明。
瀑岺会の崩壊と、斎藤道三の死亡による組の瓦解により事態は収束する。
後ろ盾を無くし、知人からも見放され全てを失った道利に雄馬が声をかけ、二人で道三行きつけのファミレスで食事をする事に。
ファミレスで食事するまで落ちぶれ、馬鹿にしていた雄馬に情けをかけられる始末だと自嘲する道利に、雄馬は彼が彼なりに責任を取ろうと必死だったのを道三は知っていたと言う。
何もないならまた始めればいい、貴方にはその力がある。そう信じて全てをかけてくれた人がいるという事を知っていてほしい。
雄馬はそう言って道利に父道三の想いを伝え、道利は再起のための一歩を踏み出す決意をするのだった。




