598回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 393: 死神の笑みはあどけなく
「外の空気が吸いたい気分ではあったけど、どこに行こうか何も考えてなかったな……」
「気晴らしになる様な場所がいいんじゃないか?
美味いもの食いにいくとかさ!」
ベイルが期待に目を輝かせ、涎と舌を出し尻尾を勢いよく振りながら言った。
「ベイルが食べたいだけじゃない?」
僕が苦笑しながらいうと、ベイルはすまし顔をして頬をかいてごまかす。
「そんな事ねぇよ?」
ベイルの嘘が下手くそすぎて僕は小さく笑う。
「ベイルが最近気になってる所に行こうか」
「マジで!?この間テムに聞いた飯屋がずっと気になってたんだぁ、行こうぜ!朝も開いてるんだよあそこ」
ほんとに嘘つくのが下手くそで、そんなベイルが可愛くてにやけてしまう。
「なにニヤついてんだよう」
ベイルが少し拗ねた顔をして見せる。
「行くの楽しみなのと、ベイル可愛いなと思って」
そう言って彼の頭を撫でると、彼は釈然としないという表情をした。
「また子供扱いするぅ、まぁ雄馬の気晴らしになるなら好きになでて良いけどよぉ」
そういいつつまんざらでもない様子で、尻尾をゆったりと振るベイルと共に、僕は噂のカフェテリアに向かった。
カフェテリアは朝から盛況だったが、僕らは良い感じのテラス席に座る事ができた。
注文したのはテムいちおしのボンボローネとカフェラテ。
ボンボローネは揚げパンに砂糖をまぶし、中に濃いカスタードクリームが入った料理。
熱々のボンボローネがカフェラテにばっちり合う。
「うーん甘みが頭に届いて目が覚める」
「俺ちょっと頭良くなった気がするぞ!」
「2×3は?」
「4!!」
ベイルはニコニコしながらそう答え、ちびちびとカフェラテを舐める。
可愛くて抱きしめたくなるのを我慢しながら、カフェラテを一口飲む。
「相席しても良い?」
なんだか聞き覚えのある声で話しかけられ振り向く。
「ちゃお、ゆーま君」
にこやかに片手を上げたワリスがそこにいた。




