597回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 392: 天秤にかけられた命
「それってどういう事ですか……?」
僕はスモーカーさんの言葉の意味が理解できず困惑した。
ブルーノはメルクリウスにいる、それに剣闘士をやるような人でもないはずだ。
「名前だけ同じの別人に決まってらぁ」
ベイルは僕の肩を抱いて、おどけてそう言った。
彼なりに僕を落ち着かせようとしてくれているようだ。
「試合形式はチームの代表者とゲスト剣闘士との一対一、相手剣闘士の名はブルーノ、身体の特徴は牛の獣人、メルクリウスから黒騎士がスカウトしてきたとあります」
スモーカーさんは淡々と言った。
「旦那様」
そばに控えていたシスティーナさんが見かねて控えめに抗議する。
しかしスモーカーさんは揺るがない。
「こういう事は明確に知った上で選択するべきだ」
彼は僕らに選択する余地を与えようとしているらしい。
迷いながら戦うなんて命取りになりかねない。
女王が仕掛けた罠であるなら、こちらの動揺を誘うのも計算のうちのはずだ。
「どうする?雄馬君、棄権するかね」
おそらく僕がここで棄権すれば、フォンターナ派の計画は頓挫するだろう。
どのみちブルーノの身柄があちら側にあるのならば、ここは打って出るしか無い。
「やります、……僕がブルーノと戦います」
「雄馬……」
陽介が心配そうな顔で僕を見る。
「無理するなよ、俺がやる。お前にとって大事な人だろ」
そういうベイルに作り笑いを見せると、僕は大丈夫だよと答える。
「少し風にあたってきます」
そう言って部屋を出た僕の後をベイルがついてきた。
「一人にしとけねぇ、お前が嫌がってもついてくからな」
彼の決意は固い様だ。
僕は苦笑し、ベイルと一緒に外に出た。




