589回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 386: 最高のお守り
翌日僕はベラと特訓をする事にした。
目的は彼女の力のコントロール、なので場所は開けたグラウンドを借りた。
牛戦車などの性能テストに使う場所らしく、スモーカーさんの口利きで二つ返事で許可がもらえた。
「とりあえず肩慣らしに普通に戦ってみようか」
「よっしゃかかって来い!」
特訓だが武器は真剣を使う。
幾度か斬り結び、ベラの攻撃を避けて肘打ちを彼女の胸に入れる。
ベラがすかさず後ろに飛んだ為手応えは浅い。
即座に彼女の斬撃、山刀で防ぐとバックラーで腹部を殴られ、即座に僕の頭を目がけた蹴りが来た。
僕は彼女の蹴り足に掌を添えて巻き込むようにしてそらし、逆側の掌で彼女を打つ。
「ぐはっ!」
ベラは吹っ飛び地面に転がった。
「大丈夫?」
「ったりまえだ」
そう言って飛び起きるとベラはニシシと笑う。
さすがタフだ、成人男性でもしばらく立てなくするくらいの手応えはあった。
「にしても不思議な戦い方だな。体の力が吸い取られたみたいに抜けて、即座に一撃がズドンだ。師匠とかに習ったのか?」
そう言って斬りかかってきたベラのグラディウスを山刀でさばき、斬り返す。
「拳法は父の友人に教わった」
「どんな人なんだ?」
会話しながら僕らは剣を交えていく。
「警察官、ヘルズベルの憲兵みたいな職業しててね、僕のおかれた状況を理解した上で養ってくれてた人だったんだけど」
「何かあったのか?」
「僕と親しくしてるのを報道されて、黒幕は警察官か?次の殺人鬼を育てる悪徳警察官。なんて言われて、警察官を辞めなきゃならなくなって。彼の奥さんと娘さんに二度と自分達に近寄らないでって泣いて頼まれて、それ以来会ってないんだ」
「そうか……」
「だけど僕には彼が教えてくれた拳法がある」
ベラの斬撃に対しグラディウスの腹を蹴り、続く蹴りを体を横回転させて交わし、回転の勢いを活かして着地した瞬間振り向きつつ肘打ちを入れる。
ベラのバックラーで防がれるが真っ二つに叩き割った。
「ヒュウ、こんなの食らったらひとたまりもないな」
苦笑いして言うベラに僕は笑う。
報道で家から出た後おじさんの口利きで後見人についてもらった人がどう考えてもヤクザだったんだけど、そこは蛇の道は蛇って奴だったんだろう。
それ以降報道関係に頭を悩ませることは無くなった。
中華マフィアとの抗争に巻き込まれた事もあったけど、おかげで磨かれた技が今活きてる。
拳法はおじさんがくれた僕の最高のお守りだ。




