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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
千の夜と一話ずつのお話
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59回目 君と僕のその先は

悠は小学校の頃幼馴染の渚と川で一緒に溺れ、

悠が目を覚ますとそこには渚の死体と、幽霊になった彼女の姿があった。


渚の姿は悠にしか見えておらず、悠は周りに彼女が見える事を隠して生活した。

他人に知られたら彼等が彼女のことを面白半分に何かと定義したがるだろうから。


僕にとって渚は渚だった、どんな存在になったって僕にとってそれは変わらない事実だったから。

渚は家に帰らず、僕の家にいる。

ずっと一緒に行動しているわけでもなかったが、彼女の帰る場所はいつも僕の目の届く範囲にあった。


僕が彼女の事をまるで懐いた猫みたいだと茶化すと彼女はむくれっつらをして怒る。

ある日の夜、渚は僕の隣で横になりながら独り言のように言った。

帰る場所というのは自分を見つめ直す場所、

だから世界で一人だけ渚を見つけられる僕のいる場所だけが彼女にとっての帰ることのできる場所なのだと。


一緒にいるの迷惑じゃない?と渚は僕に尋ねる。

僕は気にもとめたことないよと答えた。

それもそうだ、僕は彼女とずっとこうしていられたらいいと思っていたのだから。

しかし僕の返答の理由を彼女はいつも聞こうとはしなかった。


君はたぶんあえて僕の心のある一定ライン以上踏み込まないようにしてる、

わかってるから言えない言葉があった、僕が君に特別な感情を抱いていること、

それを伝えたらきっと君を傷つけてしまうから。


視線を彼女の方に向けると渚もそれに気づいて僕の顔を見た。

僕と同じように年齢を重ねていく彼女の姿、

その息づかいも存在もたしかにそこにあった。生きている、そう思えるほど彼女はそこにいる。

でも触れようとすると彼女は悲しそうな顔をする。

通り抜けてお互い触れる事ができない事を自覚させられるのを彼女は嫌がっていた。

だから僕は彼女に触れようとはしない、ただそこに彼女がいるという事だけを、

僕が彼女を見つめているという事だけを伝えるために彼女の姿を見る。

「おやすみ、悠」

渚は微笑むと目を閉じた。

「おやすみ渚、また明日」

うん、そう言いながら彼女は寝息を立て始めた。


君と僕は友情の先に進めないまま、

涙の流れない憂鬱を抱えて僕はどれくらいの時間を生きていくんだろう。

まどろみからいつしか眠りに落ちるように、

これからも僕らの日々は続いていく。


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