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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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582回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 380: 怒り、狂い、悪夢に躍る

 焔の巨人の攻撃を回避しながら接近し、ベラを木の檻に閉じ込める。


「はあっ!」

 ベラが叫び自身の周りに炎を出すと、檻は一瞬で消し飛ばされた。


 それで問題ない、僕は動き続ける。

 巨人の拳を垂直跳びで避け、ベラに二段蹴りを放つ。

 反撃の斬撃をバク転で交わし、巨人の追撃を木で生み出した壁で逸らす。


 無数の壁を生み出し、その隙間を走りながら、死角からベラに迫る。

 ベラが炎で壁を吹き飛ばしながら僕に向かって剣を振る。


 それを交わし剣を持つ腕を掴んで引き下ろし、ベラのバランスを崩した。

「フンッ!!」

 すかさず両掌で彼女の胸を強打する。


 ベラは吹っ飛んだが、着地すると僕を睨みつけた。


 この技で前に大人の男でも失神させたことがあるが、炎によって身体強化がされているらしい事と、彼女の怒りでその意識が失われることはなかったようだ。


 だけど確かに体力を削った手応えはある、それなら攻撃を続けるまでだ。


 ベラの肉体強化と炎を交えた斬撃の威力が増して地面を抉りだした。受けたらそのままダメージを負う、僕は回避に専念する。

 そこに加えられる焔の巨人の拳や踏み付けであたりが更地になっていく。


 砂埃も混ざった煙の中でベラが腹立たしげに叫んだ。


「あんたを見てるとイライラするんだよ、他人から優しくされたくてニヤついてるその顔が」


「そんなにいつもにやついてるかな?」


「ちょっとしてる」


「ちょっとな」


 呟く僕に遠くからストレードさんとベイルが言った。


「マジか」


言われてみると今の人間関係の居心地が良くて、優しさを期待しちゃうとこはあったかもしれない。


「だからといってお前に雄馬がとやかく言われる筋合いはねえぞ!」

 そう言ったベイルに巨人が攻撃し、彼は慌てて避けた。


「あいつを憎めば憎むほど力が湧いてくるんだ!

もう誰の手も必要ない!!」


 火力がだんだん上がっていく。

 足止めのために木槍を放っても燃やされてベラまで届かない。

 やっかいだけどまだ力に振り回されてる感じだ。


「やってやれない事は無い!」

 僕はそう叫びながら、ベラと巨人の猛攻を掻い潜り再び距離をつめ、攻撃を仕掛ける。


 直撃すれば確実に死ぬ攻撃を、何度も震え上がりながら、抜け穴を見つけて回避し攻撃を繰り返す。


 怖い、怖い、でも行ける!

 怪我するのは嫌だし死ぬのなんて二度もごめんだ。

 戦うのも本当ならしたくはない。


 でもどうしてか、生きるか死ぬかの狭間にいるとゾクゾクして止まらない。

 僕の自暴自棄の半分はこのギリギリにある快感のせいなのかもしれない。


「僕の読みが確かならそろそろのはずだけど」


 呟いているとベラがふらつき火が弱まった。

 ビンゴだ、ジュリアと戦っていた通り。


 あの力は感情の強さと共に強化される力。

 一見太刀打ちできないように見えるが、あまり強い力を出し続けると彼女自身も消耗して力が出せなくなる。

 怒りは身を滅ぼす両刃の剣って奴だ。


 僕は焔の巨人が揺らめいたのを見てベラに一気に距離を詰める。


「オラァッ!」

 ベラは叫びと共に放たれた斬撃を放つ。

 僕は上半身を逸らしてそれを交わし、伸び切った彼女の腕を引っ張りバランスを崩す。

 そのまま彼女と背中合わせになり、足をはらって転倒させる。白馬翻という技だ。


 しかしベラは背中から炎を噴き出し前宙して着地、再び炎を纏い僕を睨みつける。


『ガキのお守りは面倒だな』


 左腕からそう聞こえて山刀に光る文字が浮かんだ。


「ちょっと待って!」


 僕の制止虚しく左腕は僕の体を乗っ取り、スキルで分身を二人作り、ベラが分身に気を取られた隙に瞬歩のスキルで背後に周る。


 ベラの攻撃を一人が弾き、一人が足払い、僕の本体が彼女を蹴り上げ、足元に木を高速で出現させベラの上まで一気に飛び前転しながらカカト落としで彼女を地面まで叩きつける。


 僕の体は起きあがろうとした彼女の首元に山刀を突きつける。


「その程度の力で粋がるんじゃない」

 と彼女に言い放ち、僕にコントロールが戻る。

 まるでスッキリしたから後始末はよろしくといった無責任さだ。

 僕の悪性タチが悪すぎる気がする!


「結局私はあんたに勝てないんだな……」

 ベラの呟きに目を向けると彼女は悔しそうな顔で目を潤ませていた。

 もう炎は消えて戦意も失ったらしい。


「ベラ、話がある。ついて来てくれる?」


 僕は武器をしまい手を差し伸べる。

 彼女は小さくうなづくと僕の手を取った。


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