574回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 372: やり残した事
兵士達が集まりベラを拘束しにかかる。
「触るな!」
ベラがそう言って軽く振り解いただけで兵士達は吹っ飛んでしまった。
ベラの顔色が悪い、それに体を覆っている炎も不安定だ。
コントロールがうまくできてないように見える。
更に兵士が現れ彼女を取り囲む。
このままじゃまずい事になりそうだ、ベラを止める為前に出ようとした時、女王が声を上げた。
「構わぬ、良い余興じゃ。余は許すぞ」
彼女はそう言って愉快そうに高笑いし、煌びやかな羽根でできた扇子で自身を扇ぐ。
「ンフッ、ベラベッカ。力に目覚めたのはいい傾向だけどまだまだ熱さが足りないみたいね?」
ジュリアはくねくねしたポーズで残念そうな顔をした、明らかにベラを挑発している。
「邪魔が入ったのは気に食わないけれど、そうね
、今のあなたには殺す価値はないわよねぇ」
ジュリアは将冴にそう問いかけるが、彼はつまらなさそうな顔で彼女を無視した。
「あら、いけずな坊や」
ジュリアは肩をすくめた後、ベラを見下ろし悔しそうに睨む彼女を楽しげに見下す。
「あなたの相手は闘技場でしてあげる、それまでにもっともっと私を恨んで憎んで強くなってね」
この距離が今のベラとジュリアの距離、力も地位も及ばない。
ベラの力はおそらくジュリアと双極をなすものだ、使いこなしさえすれば同等以上に戦えるかもしれない。
だけど今の我を失ったベラにそれができるとは到底思えない。
それに気になることがもう一つ。
僕は左腕を掴み将冴を見る、あの時見えた光景、将冴はなにか知ってるはずだ。
将冴は視線に気づき、僕を一瞥すると女王やジュリアに続いて去っていく。
目を離していた間にベラもいなくなっていた。
「行こうぜ」
陽介が僕の肩に手を置いて言った。
笑顔を作ってはいるが将冴を心配する気持ちが顔色に出てしまっている。
「うん、そうだね」
僕は気づかないふりをしてみんなと帰路に着く。
まだ解決するべき問題がたくさんある。
本当にこのままメルクリウスに戻るべきなのか、僕は一人考え続けた。




