573回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 371: 怨嗟の鎖
僕は女王の持つ紅玉の腕輪を見て眩暈がした。
ベイルはそんな僕の肩を抱く。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「なんでもないよ」
自分でもわかるくらい緊張した声で僕は答える。
「そうか」
ベイルは深くは聞かず、ただ優しく肩をさすってくれた。
夢の助言に従って、これ以上みんなの命を危険に晒すなんて馬鹿げてる。
でも女王がこのタイミングで賞品に紅玉の腕輪を出したことは偶然と言い切れない。
左腕が僕に何かを促すように鈍く痛む。
「ジュリアぁあああああああッ!!」
ベラベッカの叫び声と共に彼女のいたあたりの剣闘士達が青白い炎で吹き飛ばされるのが見えた。
爆心地の中心に立つベラは、左目から青白い炎を放ち、全身にそれを纏ってジュリアに向かい飛んでいく。
ジュリアは嬉しそうに笑うと髪をかきあげ右目から赤い炎を出し、それを指で引いて周囲に炎の渦を引く。
炎の渦は三本の炎剣へと変貌し、それらはジュリアの前で盾のように交差して、ベラの攻撃を斬り払い勢いを相殺。
ジュリアがベラの心臓に指を刺すと、彼女の前に一際明るく炎が現れ剣にの形に収束していく。
次の瞬間、貴賓室の奥から放たれた火球がベラに衝突し爆発が起きて彼女は宙空にその身を投げ出された。
しかし地面に激突する間際、彼女と地面の間に青い炎が弾け、その勢いで吹き飛ばされたベラは地面を転がっていった。
どうやら大きな怪我は負っていないようで、ベラは苦々しい顔でジュリアを睨みつけた。
「なんだってんだいきなり」
ベイルは僕を庇いながら戸惑いの声を上げる。
「なぁ雄馬、今のって」
陽介が目を丸くしながら貴賓室を見ている。
「うん、あの魔法は間違いない」
僕らが貴賓室を見上げていると、奥の方から将冴が姿を表した。




