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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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567回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 365: 山頂にある物

 おじいさんに近づこうとすると、断続的に見えない空気の壁のような物にぶつかり後退させられてしまう。

 何かのオブジェクトだろうか?

 試練というだけあって一筋縄では行かないようだ。


 僕は横に向かって走り、弧を描く形で近づく事にした。


「あぐっ!!」

 真横から空気の壁をくらい姿勢を崩した僕は、ローリングで衝撃をいなしてさらに走る。

 今の一撃が来る時におじいさんの周囲に舞うチリが吹き飛んだように見えた。


 僕はおじいさんを注視し、その周囲のチリが吹き飛んだ瞬間前方に飛び込み前転をした。

 僕の上方を掠めて飛んだ空気の壁が通り過ぎ、岩にぶつかって弾けた。


「もう見切ったか、良い調子だ。ここでのやり取りは客席には見えとらん、オブジェクトを使っても問題ないぞ」


 僕は琥珀のダガーを左手で引き抜き、進行方向の先や、天井からツタを伸ばして体を高速で引っ張らせ、次々に迫り来る空気の壁を回避し、おじいさんに肉薄した。


「ホホッ」

 この状況でも余裕のおじいさんに左拳を突き出し触れようとした。

 その瞬間、おじいさんの体を包む見えない壁が僕の左拳を弾いた。


 距離を取りツタを彼の足元から伸ばして縛り上げようとしたが、それも弾かれバラバラにされた。

 攻撃のとは違うバリアのようなものが全身に張り巡らされているようだ。


「ほれほれ、考え込む時間はないぞ」

 おじいさんが手にした杖を地面に突くと地面が揺れ、動けなくなっている間に見えない斬撃を飛ばしてくる。

 ガントレットで凌いでいると空気の壁に吹っ飛ばされた。


 空気の壁の威力が増大し続けている。

 このまま威力が上がればぺちゃんこにされてもおかしくない。

 死んだ剣闘士達はぐちゃぐちゃに潰されてたって話だった、つまり彼が始末してるって事だ。


「山頂にあるのはそれ程危険なものなんですか?」

 僕は山刀で見えない斬撃を弾きながら聞いた。


「あれが人間の手に渡ればこの島が破滅するのでな」


 空気の壁を蹴り宙返りし、向こう側の壁から伸ばしたツタで飛んで追撃を回避。


「女王が戦争の道具にするからですか?」


「あれを使われればプロスペロが動く、あやつがその気になればこの島に住む総ての者を皆殺しにしかねん」


「そんな馬鹿な」


 着地と同時に低姿勢のまま、ツタでおじいさんに向かい高速移動で近づく。


「あやつは狂っておるのよ、必要だと考えれば迷いなくそれを実行するだろう」


 おじいさんが斬撃を放つ。

 僕は進行方向に出した木の柱で三角飛びして交わし、おじいさんの横面に蹴りを放つがやはり防壁に阻まれた。

 やはり自動発動スキルのような物らしい。

 連続で攻撃を入れる手段があれば通るかもしれない。


「くっくっ小童がやりおるわ」


「貴方もおじいちゃんのくせに強すぎですよ」

 僕はおじいちゃんが放った地を突き上げる衝撃波を山刀で斬り裂き凌いだ。


「かっかっ、若い頃を思い出すのう。ヴァールダントともこうして手合わせした事があったわ」


 おじいさんの攻撃に速さが加わる。


「七つの大罪を治める四元徳の化身、それがテトラモルフだ。それをなぜ人であるお主が使えるのか。そこに魔王が人を生かすため自ら滅びた答えがあるのやも知れぬ」


 強さが増す。


「全てのテトラモルフを発現できるようになった時、お主はこの世界から全ての人間と共に混沌を消し去る力を得る。その時お主が勇気ある決断を下せる者かどうか」


 鋭さと共に殺意が増大した。


「さあ見せてくれ、お前がヴァールダントが未来を託した存在であるという証を」


 おじいさんの決意は固い。

 この場を打開する手段は限られている、僕も覚悟を決めなければいけないらしい。


 必殺の意志と共に構えをとる僕を見て、ペストマスクの下で両眼が紅くギラリと輝いたように見えた。

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