561回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 359: アルマジロのロメロ
ラプトルの牙が僕らの首を噛み切ろうとした瞬間、横から回転しながら飛んできた銀色の巨大な球がラプトル達を弾き飛ばし壁に叩きつけた。
巨大な球は地面を転がり、人型に展開すると立ち膝の状態でスライディングして静止した。
フルメイルを身に纏い、鉄仮面をつけたアルマジロ獣人がそこにいた。
彼は鋭い目つきで僕らを睨みつける。
「あんた敵か、それとも味方か?」
ベイルは武器を構え、アルマジロ獣人に問いかける。
現状が女王の意図によるものなら、他の剣闘士に僕らを攻撃する命令を下していてもおかしくはない。
緊張が走り空気がひりつく中、僕はアルマジロ獣人目を見てはっと気がついた。
「路上ミュージシャンの人?剣闘士だったの?」
彼は僕を一瞥し、少し柔らかい目つきをした。
「てってってっ、鉄塊弾のロメロッ!!」
アイアイ獣人の衝撃から立ち直ったテムがアルマジロ獣人を見て興奮しながら叫ぶ。
「いきなり大声出すなよなぁ」
ベイルは耳を押さえてテムに抗議した。
「知ってるの?」
「そりゃあもう、集団戦に突如として現れる正体不明のトリックスター、ロメロのことを知らないなんてモグリ扱いされちゃいますからね!」
「そんなに凄い人なんだ」
「出場登録なしに現れて、ついた側はどんな劣勢でも負け無し、大番狂わせで人気を博してる剣闘士ですもん。一説には女王に雇われてる凄腕の傭兵なんて噂も……」
その言葉にみんなは再びロメロを警戒した。
彼に近づく僕の肩をベイルが掴む。
「聞いてなかったのかよ雄馬、あいつ女王の手先かもしれないんだぞ」
「大丈夫、悪い人じゃないよ」
僕はそう言ってロメロに近づき、右手を彼に差し出した。
「助けてくれてありがとう」
ロメロはしばらく僕の手を見つめた後、右手人差し指を差し出し、僕は彼の指を握り握手をした。




