559回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 357: 走れ!
僕は溶岩ナマズの噛みつきを交わし山刀で斬りつける。
しかしその表皮はゴムのように柔軟で岩のような頑丈さがあり傷一つつかない。
ナマズがマグマ流に飛び込み、爆ぜた溶岩を交わしながら僕はテムを小脇に抱えて走り出した。
「みんな逃げよう!」
「おっおう」
少し戸惑いながらベイルと陽介もついてくる。
目標が火山登頂であるなら今は無理にナマズを倒す必要はない。
体力の温存もしておかないといけないし。
「テムは道を教えて」
「わかりました!このまま真っ直ぐ、突き当たりの坂を下って溶岩窟に向かってください」
僕はマグマ流の配置を見ながら、溶岩ナマズの攻撃で足止めされないルートを見極め突っ走る。
ナマズは走る僕らを追いかけ、ひとのみにしようとマグマ流を飛び回り、溶岩の滴を飛ばしてくる。
それでも捕まらないと見るや先回りし、尻尾で道を塞いで横薙ぎに攻撃してきた。
「せーの!」
「「よいしょおッ!!」」
掛け声にあわせてみんなでジャンプして交わす。
「うわっ!?」
横から飛び込んできたラプトルの様な小柄の恐竜が陽介を襲う。
陽介はラプトルを槍でついてリーチで噛みつきを防ぐ。
「危ない!」
もう一匹飛び出し陽介に襲い掛かる。
すかさず僕は山刀でラプトルに斬りかかる、浅い、片手だから力が足りなかった。
しかし傷を負ったラプトルは飛び跳ねて僕らから距離をとった。
再度ナマズの飛び跳ね攻撃、それに加え三体目のラプトルの同時攻撃が迫る。
「せいッ!」
ベイルがラプトルに爪撃で対応、テムはナマズの顔に煙玉を投げつけ、僕らは視界を失ったナマズの攻撃を交わして走り出す。
突き当たりの坂、飛び降りる様に坂を駆け下り、500mほど先に洞窟が見える。
ラプトルの追撃に応戦しながら洞窟に駆け込む、壁にたくさん大穴が空いている。
天井から火焔放射のようなブレスを放たれ回避、天井を見ると口から残火を燻らせた大蜥蜴がいる。
「おいおい、どんどん集まってくるぞ」
ベイルの言葉通り大蜥蜴がどこからともなくやってきて、出口を塞ぐ様に火炎放射をして、そのままこちらにそれを向けてきた。
「わちゃチャチャチャッ!!」
ベイルの尻尾に火がつき彼は涙目になって走り回る。
僕はベイルの尻尾を掴んで火を消し、叫ぶ。
「みんな奥へ!急いで!!」
そう言うとテムを内向きに抱きかかえ、走り出す。
「テム、追ってくる大蜥蜴の攻撃方向を教えて!」
「はいな!あっ兄貴!右後ろから!」
テムの指摘通り回避、そばにあった岩がチョコレートみたいに溶けた。
「次ベイルさん左に避けてください、陽介さんジャンプして岩に飛び乗って!」
「「ひぃいい!」」
陽介もベイルも必死に逃げる。
壁の穴からゴソゴソと動く音が迫りスライディングして避けると、僕の目の前を巨大なムカデが顎をガチガチと鳴らして通り過ぎていった。
穴から穴へ僕らを狙いムカデが飛び交い、火炎放射が追いかけてくる中、眼前に大穴が見えた。
「行き止まり!?」
「穴につきましたね、飛び込んでください!」
「マジで!?底見えないけど!?」
「もう行くしかねえだろうがよー!!」
そう叫びながらベイルは戸惑う陽介の背中を抱えて穴に飛び込む。
僕はムカデの体で火炎放射を凌ぎ、大穴へと飛び込んだ。




