557回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 355: モーディフォード火山
「おい、雄馬」
「ん、なに?」
「お前大丈夫か?顔色が良くないぞ」
陽介が心配そうに言った。
「そう?」
「昨日帰ってくるのも遅かったし、あんま寝れてないんじゃねぇか」
ベイルも耳を伏せ心配そうな顔で僕を見る。
「心配させてごめん、気持ち切り替えなきゃね」
僕はそう言って自分の頬を叩き笑顔を見せる。
ベイルが僕の首元の匂いを嗅ぎ、頭を僕の胸に押し当ててきた。
「撫でても良いぞ」
ベイルの言葉に甘えて僕は彼の首元を撫で、もふみを満喫する。
ベイルも尻尾を振って嬉しそうだ。
彼はゆっくり頭を上げ、僕は彼の頭になでなでをシフトさせ、気持ちよさそうな顔をするベイルを愛でながら顎の下も撫で回す。
「ほわぁ……やっぱ雄馬のなでなでたまんねぇ……」
うっとりしながらそういうベイルに僕は笑う。
そんな僕を見て陽介とテムは笑顔を浮かべた。
通路を抜けアリーナに出ると、眼前の光景に僕らは目を疑った。
「なぁ、ちょっと俺の頬つねってみてくれ」
ベイルにそう言われて陽介は彼の頬をつねる。
「いでででっ!思い切りつねるんじゃねえよ!!でもこれ夢じゃねえみたいだな」
「ベイルにも見えてるなら俺の目がおかしいわけじゃなさそうだ」
困惑しながら陽介は頭に手を当てる。
アリーナに踏み込んだはずの僕らは黒く溶けた岩肌の間に、赤熱した溶岩の流れる山にいた。
「あわ、あわわっこれ不味いです、不味いですよ!」
「どうしたのテム?」
「転移方陣を使ったダンジョン攻略ミッション、しかもモーディフォード火山!ここで生き延びた剣闘士は今まで一人もいないんです!!」
「おいおいマジか、つーか何も知らされてねえけどここで何をすればいいんだ?」
「ここにいるクリーチャー達を排除して、山頂までのルートを開拓するのが目標で、他にも剣闘士チームがいくつか参加してるはずなんですけど……」
「女王陛下のおもてなしってことか」
陽介はそういうと槍を手に取り数回振るった。
スパルタコーチの板挟みレッスンで度胸がついてきたみたいだ。
「とりあえず山頂を目指そう、それから他のチームを見かけたら協力を持ちかける。それでいいかな?」
みんなは僕の提案に同意の声をあげた。
「あ、兄貴!俺このミッション何度か見たので途中までなら道案内できます」
「地獄に仏だ、よろしくねテム」
「お任せを!」
僕らはテムの道案内に従いながら、火山を登り始めた。




