556回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 354: 君の面影を追う
翌日ベラのことが気になり、彼女達の訓練場へ様子を見に行くと、そこには打ちのめされ地面に倒れた剣闘士達の姿があった。
グローツラングが倒れた剣闘士達の手当てをして回っている。
「一体何があったんですか?」
「坊主か、ベラの奴今朝から様子がおかしくてな……」
彼の話ではベラが豹変し、訓練場の剣闘士達を乱暴に蹴散らし「あんたらじゃトレーニング相手にもならない」と出て行ってしまったらしい。
そんな彼女に対する剣闘士達の心情は、訓練場に漂う険悪な雰囲気で否応なく理解させられる。
「グローツラングのよしみで受け入れちゃいたが、ああなっちまうともう手を貸す気にはなれねぇよ」
剣闘士の一人が吐き捨てるようにそう言って、グローツラングは肩を落とす。
「ベラを探してきます」
「待て、今のあいつはまともじゃねえ。お前もやられちまうぞ」
グローツラングは僕の腕を掴むが、僕の顔を見て手を離した。
表情に気持ちが出てしまっていたらしい。
「昨日何があったのか?」
「こんな状況ほっとけないだけです」
僕はその場を後にして、街中ベラを探して回った。
しかし手がかりすら見つけられないまま、日が暮れていく。
ベラの楽しそうな顔と、ジュリアに遭遇したあとの憎しみに歪んだ表情が脳裏をよぎる。
「だめだよベラ、そっちは君がいくべき場所じゃない」
そう呟き僕は顔を上げ、まだ行っていない場所に向かって走る。
夜更けまで捜索を続けたが、結局その日ベラを見つけることはできなかった。
そして翌日、次の試合を行うため僕は闘技場へと向かった。




