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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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548回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 346: ささやかなお祝い

 試合が終わり邸に帰ると、スモーカーさんとシスティーナさんが祝勝会を開いてくれた。

 土日休みにあわせて帰ってきていたミサもいる。

 ストレードさんに革覆面剣闘士、それに新しく仲間になったテムもいて賑やかなパーティだ。


「どやっ!」

 本日のMVP、カモノハシのテム君がMVPの証のメダルを首にかけ、胸を張ってみんなに見せびらかしている。


「はいはいすごいすごい」

 最初は全力で褒め称えていたベイルも、流石に二十回目の自慢になるとめんどくさそうな顔で拍手している。


「こいつメダルもらってからずっとこれだもんな」

 陽介は苦笑した。


「ずっと邪魔者扱いされてたらしいから嬉しいんだよ」


「そういう事なら今日くらい付き合ってやっても悪くないかもな」


「陽介もよく動けてたね」


「鬼コーチのしごきのおかげだな、あの人相手にするの同時に複数人と戦うのと同じだから」


「鬼で悪かったな、これでもお前に合わせて甘めにしていたんだが……もっと厳しいので行くか?」


「お、お手柔らかに……」


「ストレードさん、仕掛け武器貸してくれてありがとうございます」


「ああ、あんな物大量に持ち出してどうするつもりだと思ったが、まさか使いこなすとは思わなかったぞ」


「テムは体に合った戦い方を知らなかっただけですからね、体力不足も道具で補えましたし」


「女王もこの結果は計算外だろうな」


「そういえば今日の試合随分無茶な内容だったけど、どうしてなんだ?」

 ベイルが訪ねた。


「それは私から説明しましょう」

 ニコニコと笑いながらスモーカーさんが言う。


「この国の闘技場では女王が胴元の賭けが行われていましてね。私があなた方に大金を賭けたものですから全力で阻止しにかかったというわけで」


「いったいいくら賭けたんですか?」


「全財産です」


「えっ!?」

 その場にいた全員が同時に言った。

 ストレードさんも予想はしていたものの、額に驚いたようだ。


「君たちが見事に打ち負かしてくれたおかげで、彼女の目論見も失敗、私は大金をせしめたというわけです」


 笑顔はいつも通りだが声にどこはかとないテンションの高さを感じる。


「そのお金で以前から手をつけたかった土木関連の事業に投資することができたので、土木ギルドからお返しに訓練場の改修をして貰えることになりました。月曜日には終わっているはずです」


 期待されるとこうなるわけか、人は見かけにはよらないというか、スモーカーさんも意外とアグレッシブだ。


「この国の内政はガタガタです。なので他にも手をつけるべき問題が山積み、そのための予算のあては君たちにあります。これからも頑張ってください、期待していますよ!」


 つまりこれからも熱い一点賭けをされ、女王に無茶な試合を強いられるわけか。

 確かにこの人ワリスと仲良くなりそう、と苦虫を噛み潰したような気持ちで納得してしまった僕であった。


「無茶をやらされる分クラスアップも早い、嫌ならスモーカー氏に言えば賭けはやめてくれるだろう」

 ストレードさんはそう言って僕らを見る。


「だそうだけど、みんなどうする?」


「俺は雄馬についてくぞ」

 ベイルはニッと笑う。


「乗りかかった船だ、最後までやってやる!」

 陽介は自分を鼓舞するかのように言った。


「未来のチャンピオンにおまかせあれ!」

 テムは完全に気持ちがうわついてるけど、頼りになるのでこのまま巻き込んでしまおう。


「という事でドンと来いです」

 笑顔でストレードさんにそう言うと、彼は「だろうな」と呟き満足げに口角を上げた。


「それじゃあトレーニングも厳しくしていくからそのつもりで」


「「ええ?」」

 僕らは困惑の声を漏らす。


「お前らを勝たせるのが私の役目だ、自分で選んだことには最後まで責任を持つんだな」


「そんなぁ」

 一番スパルタにしごかれる陽介がガックリした。


「陽介見込みあるし、宝蔵院胤舜目指そう!」


「期待が重いんだよなぁ」


 僕と陽介のやり取りを見つめてアリスがモジモジしている。


「あらあらまぁまぁアリスちゃん、もしかして乙女なお悩みかしら?」

 アリスの隣に座っていたミサがそんなアリスをいち早くサーチ&アタック。

 あの年頃の女の子はそういう話題に関してオオカミのような嗅覚を持っている気がする。


 アリスがなにやらミサに耳打ちし、ミサは両手を合わせ目をキラキラさせた。


「わぁそれって素敵!私からおとー様に頼んでみるね」


 なんだか話の内容が気になるので聞いてみるか。


「なんの話してるの?」


 ミサはむふーっといったいじわるな笑顔をして、人差し指を立てて指を横に振った。


「ひみつだもんねーアリスちゃん」


「うん、秘密」

 アリスもはにかみながらミサに調子を合わせる。


「二人ともすっかり仲良しさんだねぇ」


「えへへー、あっそういえば雄馬達ってプレイヤーのはぐれた仲間を探してるんだよね」


「うん、なにか情報があったの?」


「最近プレイヤーが一人捕まって、お城で取り調べを受けてるって話を聞いたよ」


「将冴の奴生きてたのか……」

 陽介はほっとしたような顔をした。


「よかったね陽介」


「なぁにが、かっこつけて捕まってたら世話ないっつーの!」

 喜びが隠しきれてないぶっきらぼう顔をして見せる陽介に苦笑しながら、僕は将冴のことを考える。


 無事だったのはよかったけれど城となると救出が大変そうだ。

 尋問で酷いことされてないといいけれど。

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