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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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532回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 330: 嵐の果てに

 ガルドル文字による階級は、特に何かを示さなくても察知が可能らしく、人間が蟻のような能力を付与されていることに不気味さがある。


 それはそれとして僕自身の階級の高さを悪用し、この国についても調べを進めていくことにした。


 ヘルズベルは元は地上の辺境にあり、代々モンスターとの融和方針の国家だった。

 その為皮肉にもモンスターにも人間にも信用されず、交易なども行いにくく、必然国としての維持が難しい立場にあった。


 そこで歴代の王がテンペストの魔女シコラクスと屍竜キャリバンの力を借りて、魔術を使いながら国を維持してきたという背景があった。


 しかしエロイーズと一部の権力者が動いた。

 ヘルズベルはテンペストの魔獣と魔女に支配され、王はその傀儡であり、その為に国民は貧しい生活を余儀なくされている。という名目の国家刷新を謳った反乱だ。


 先王フォンターナは騒動の最中殺され、現在の女王エロイーズの支配下になった。


 しかしその後生命線であった魔術を絶たれ、その対策として女王達の打ち出した政策はことごとく失敗、国政がガタガタに崩れ、崩壊の危機にあった所を聖王プロスペロからの提案で国民ごとテンペストに移り住んだ。


 テンペストにわたり、島の東部を譲られた後、プロスペロの要求に従いメルクリウスの都市に希望者を移住させる事になった。


 モンスターや、人とモンスターの混血達は生活環境の変化を恐れてヘルズベルに残留したものの、女王の無軌道な統治に嫌気がさした人間達の一部が移住、魔術により環境の整ったメルクリウスに人気が集まっていく。


 その事態に危機感を抱いた女王に黒騎士達が接触、彼らから渡されたガルドルの石板による統治が開始され、女王はヘルズベルを鎖国状態にし、メルクリウスに宣戦布告した。


 初期の頃の出兵は身体能力の高さからモンスターや混血達によって行われ、その時の捕虜達が現在のメルクリウスのモンスターや混血の主なルーツであるらしい。


 テンペスト外からモンスターを奴隷として連れてくる商人はいるものの、人数が多いのはそうした事情からだったようだ。

 メルクリウスの獣人種の迫害は主に市民感情を起因としているみたいだ。


 ヘルズベルでは獣人や獣頭人にも普通の人権があるらしく、人間達と気さくに交流している姿が目立つ。

 そういった点にメルクリウスに比べると文化の違いを感じる。


 この国には価値によって市民の等級が決まるらしく、特権階級、一般階級、賎民、棄民と大まかに分類されている。


 賎民は棄民一歩手前の危うい立場であり、棄民にされる前に自身を奴隷として身売りする事で都市から放逐される事を防いでいる人も少なくないらしい。


 他者に生殺与奪権を握られるメルクリウスと違い、この国における奴隷はセーフティネットの役割があるようだ。

 その事からか奴隷というよりは市民の階級の一つという扱いに止まっている印象がある。

 こうして奴隷身分になった僕が一般人扱いで買い物ができるのがその証拠と言えるだろう。


「ここまでの情報じゃメルクリウスよりいい都市のような気がしてしまうけど……」


 その反面、棄民として廃棄されたワリス達の受けた所業に、個々人の思考を奪い隷従させるガルドルの存在はやはり見過ごせない暗部だ。


「んっこれ美味しいな、みんなにも買って帰ろ」


 屋台で買った焼き菓子が美味しくて、僕は大袋入りを二つ注文した。

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