521回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 319: 闘王国ヘルズベル(2)
瞼を開けると、馬車からどこかの豪華な部屋に変わっていて、僕は少し驚いた。
馬車で目を閉じた後気を失っていたらしい。
首の痛みがなくなっている、首に触れると傷が消えていた。
「雄馬、目覚めたか」
「よかった、心配した」
陽介とアリスが僕を見て胸を撫で下ろす。
「心配かけてごめん、ベイルは?」
「もふもふなら剣闘士のおじさんたちが殴って連れてった」
「えっ!?」
「アリス言い方、雄馬びっくりしてんじゃん。ベイルはお前の傷薬で治療した後、お前から離れないって聞かなくて、剣闘士に後頭部殴られて気絶して、今応接室で治療と検査してるとこだ」
「うーん詳細に聞いてもやっぱ心配だよ」
ベイルがこの都市に入ってした事から、彼が危険な存在として拘束される可能性は高い。
それになんとか心を呼び戻せはしたけど、いつまた不安定な状態になるか心配だ。
「彼は我々の命の恩人です、無碍には扱いませんからご安心ください」
スモーカーさんが優しい声でそう言って微笑む。ソファーに座り静かに僕らの様子を見ていたらしい。
「助かります」
「ははは、そんなにかしこまらなくても良いですよ。ベイルさんの取り調べにはもう少し時間がかかりそうですね」
そう言うとスモーカーさんは傍に立っていたメイドのお姉さんを見た。
「システィーナ、彼らに屋敷の案内を」
「承ります」
ん?案内?
「もしかしてここで寝泊まりしてもいいんですか?」
「ええ、もちろん。あなた方は私にとって大切なお客様でもありますから」
にっこりと柔らかい笑顔を浮かべると、スモーカーさんは部屋を後にした。
「お客様か、手厚すぎてなんだか逆に怖いぜ」
「たぶんワリスが手を回してくれたんじゃないかな」
「あの胡散臭いお姉さんかぁ」
「うん逆に不安になるのは僕もわかる」
「それでは皆様、屋敷を案内いたします」
「よろしくお願いします」
僕らはメイドのシスティーナさんの案内で、スモーカーさんの邸を見て回ることになった。




