517回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 315: 血染めのアリーナ(8)
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集落外れでドルフとワリスが棄獣の群れの中で戦い続けていた。
「だぁー!キリがねえ」
「ロープ壊しに来た人達殺しちゃえば止められたのに。雄馬君に再会したら人間殺すの嫌になった?」
「うるせえ、てめえもお得意の能力使わなかったじゃねえか」
「思考挟まずに行動してる手合いは感情殺しても無駄だもの」
「あいつら普通じゃ無かったがなんだったんだ」
「ガルドル文字に精神を侵食され切ってる連中。なにもなきゃ女王に奉仕するために都市行きを目指すだけだけど、今日は闘技場の客に女王が殺しておきたい人間が混じってたからね」
「……おい、もしかしてそいつを呼んだのお前じゃないだろうな」
「もちろん私」
「なんでそんな真似すんだよ!?」
「国外逃亡の手助けなんて反体制派の権力者くらいしかやらないでしょ」
ワリスはそんなこともわからないの?といった顔でドルフを見た。
ドルフはそんな彼女に拳をワナワナさせながら、息を吐いて棄獣を倒し続ける。
「俺も甘かったかもしんねぇ」
「そうそう反省してね?」
「少しでもお前を信じたのが馬鹿だったって話だッ!」
「あははは」
怒ったドルフを見て愉快そうに笑いながら戦うワリス。
二人は次々に棄獣を葬っていくが、大量の棄獣を全て倒し切るには至らず、何割かが集落に向かっていってしまう。
「なんとか無事でいてくれよ雄馬」
ドルフは倒しきれないもどかしさに歯噛みしながら、祈るような想いでそうつぶやいた。




