509回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 307: ジンクス(3)
帰り道、集落に入った僕は奇妙なものを見た。
眼球が全て真っ黒な人だ、それも一人二人じゃない。
目を擦り、再度見ると普通の光景に戻っていた。
「疲れてるのかな、崖登るの大変だったし」
暗くなってきたから見間違えたのかもしれない、早く帰ってベイルの胸毛を嗅いで忘れよう。
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「ゆ、ゆぅま……しゅごい……」
「ふふっ、ベイルったら軟膏塗るだけでこんなに感じるなんていけない子だ!」
「ひゃあぁんっ」
ドルフにもらった軟膏を、自室でベイルのお腹に塗っていたら、何故かベイルが蕩けた顔で嬌声をあげ始め、なんだかいけない気持ちになってきた僕は、軟膏をサンオイルのようにベイルのお腹に塗りたくり、抱きしめながら腰から背中にも塗る。
毛皮の奥までちゃんと届くように、僕の指が艶かしくベイルの全身をぬるぬると蠢き、彼の体を刺激していく。
「あっあっあっ……ゆうまぁあぁっ」
ベイルは涙を目に浮かべながら僕を抱きしめ頬を舐め回す。
これはけして僕がしたいとかじゃない。
ベイルの治療のためなのだ、医療行為だから仕方ないのだ。
はぁ……ベイルの胸毛ふかふか、お日様の匂いがする。
「きもひよすぎて、おかしくなりそうら……」
ベイルは脱力して床に倒れ、舌をだらしなく出して、涎を流して全身から汗を噴き出しながら痙攣している。
この軟膏もしかして媚薬効果とかあるんじゃあるまいな?
いやいや疑うまい、ドルフの好意をありがたく受け取ろう。
僕はベイルを転がし背中を向けて、軟膏を塗り込んでツボを押していく。
「あふぁっ!あっはっはっ……はぁ……はぁ」
「どうだいベイル、中国式の指圧だよ。軟膏と合わせてベイルの怪我は治りまくってる、感じるかい?」
「か、かんじまひゅ……体の芯から全身に快感が駆け抜けて、あひゃああぁっ意識、もう、飛びそ……ぅ」
そこから僕はまたベイルを仰向けにし、仕上げにツボを押しながら押し上げつつマッサージをした。
「ひっひぃんっ」
ベイルは喘ぎながら体を跳ね上げ痙攣する。
「ひはっはひぃっひっひっ」
白目を剥き、手足をビクビクと引き攣らせながら、彼の全身が脱力した。
どうやら気絶してしまったらしい、しまった、調子に乗りすぎてしまった。
僕はベイルに包帯を巻き、抱き抱えてベットに降ろそうとした。
「いかないでくれよぉ……」
ベイルは意識をなくしたままそう呟き、僕の体を抱きしめ離さない。
無理に離すのも忍びなくて、僕はそのまま彼とベットに横になった。
ベイルの体温を感じ寝息を聞きながら、僕はワリスに預けた陽介達の事を思い浮かべる。
みんなどうしてるだろう。
陽介と将冴喧嘩してないといいけど……。
ベイルと一緒にいる安心感と、ベッドに横になった事で今日の疲れが一斉に襲ってきて、僕は大きな欠伸をして微睡む。
顔を横に向けるとベイルの幸せそうな寝顔がある。
彼の頭を撫でるとなんだか優しい気持ちになった。
「雄馬……俺とずっと一緒に……」
寝言だろうか、寝言でもそう言ってくれるのが心から嬉しく思う。
「うん、ずっと一緒だよ。ベイル」
「へへへ……ゆうま、好きぃ」
彼は寝ながら僕の顔面を舐め僕は思わず「うわぷっ」と小さく声を出した。
「もうベイルったら」
僕は彼の顔に頬を寄せ、眠りについた。
きっと大丈夫、みんな上手くいくはずだ。




