508回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 306: ジンクス(2)
「ふいー、ごちそうさん」
「ふふ、良い食べっぷりでしたよ」
「なんでえっちなもの見たみたいな顔してんだよ」
ドルフは僕の顔を見てたじろぐ。
おっといけない気持ちが顔に出ていたらしい、僕は涎を拭いた。
「なんでもないよ」
「本当か?また俺にエッチなことしようとしてないか?」
「僕がそんな節操なしに見える?」
「もちろん」
即答でうなづかれた、そんなにドルフを襲撃していただろうか?
言われてみるとしていたような気もする。
「そいで、なんかあったのか?」
「どうしてわかったの」
「そりゃー顔に書いてあるからな、いろいろとわかりやすいんだよお前」
そう言うとドルフはニヤリと笑った。
お前の事詳しいだろ?と自負するような雰囲気が可愛い。
それはともかく、どうも僕は隠し事をするのが向いてない疑惑があるなぁ。
「ベイルが怪我をしたんだ。初戦で怪我をした剣闘士は都市入り前に死んじゃうって噂話聞いたら不安になっちゃって」
「なるほどな、そういう事なら良いものがある」
そう言ってドルフは僕に手のひらくらいの大きな二枚貝を紐で縛ったものを渡した。
紐をほどき中を見ると、軟膏のような物が入っている。
ほのかに香るいろんな薬草の匂い、怪我に効きそうな感じがする。
「エルフの霊薬ほどじゃないが、こいつもかなりの効き目がある傷薬だ」
「エルフの霊薬はどんな効果があるの?」
「どんな怪我や体の欠損すら一瞬で治しちまう薬でな。お前がオブジェクトを手に入れるためにそれを飲んで、炎に焼かれながら焼き尽くされて死にかけた時はどうしようかと思ったぜ」
「なにやってるの昔の僕……。それはともかくありがとうドルフ、無理はしないでね」
「おう、お前もな?」
ドルフに念押しするように人差し指を刺されて僕は苦笑する。
「まぁ言って聞くなら苦労はしないか」
そう言ってドルフはガハハと笑った。




