503回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 301: 弱者の戦い方(1)
闘技場の構造は客に見せるのを目的とした広いコロシアム形式の場所と、試験用の幾つかの小規模な闘技場に分かれているようだ。
人間とモンスターは体力の違いがありすぎるため、人間とは別の場所で試験しているらしい。
「ここらへんかな?」
道ゆく人に場所を尋ね、モンスターの試験会場に近づくと背後から「ゆ、雄馬ぁ」とベイルが情けない声で話しかけてきた。
「ベイル、探して……うわ、何その格好!?」
振り返るとベイルはアザだらけのボロボロの姿をしていた。
「なんとか合格……した」
そう言いながら倒れてきたベイルを抱きとめる。
「ベイルが手こずるような相手ってどんなモンスターだったの?」
「今日参加してたモンスターがたまたま巨漢のとんでもない暴れん坊で、そいつが強えのなんの……」
枠が限られるとそういうことが起きるわけか。
ボクシングで言うとフライ級の選手にヘビー級選手があてがわれた様な。
「よく勝てたよ、ベイル偉い。いいこいいこ」
「うー子供扱いすんなよお」
むくれながらもベイルは尻尾をパタパタと振った。
僕らは闘技場をあとにすると、夕食に出来そうなものを買い、割り当てられた宿舎に入った。
ここの剣闘士は都市側にプロモーションして買われるまでは比較的自由に動けるらしく、行動の自由があるのがありがたかった。
食事を済ませた後、ベイルのマッサージをしながらこれからのことを考える。
「次は猛獣を相手にした集団戦かぁ」
最終的に兵役を想定してるわけだし納得だ。
ただグループは自分で決めなきゃならなくて、僕とベイルじゃ人数が足りない。どうしたものか。
トントンと扉を叩く音がした。
「なんだろ、ちょっといってくるね」
「ひゃ……ひゃい」
ベイルは蕩けた顔で舌を出し、全身をビクビクとさせながら甘い声で答えた。
「はーい」
扉を開けるとそこには二人の男が立っていた。
一人は今日僕と対戦した青年だ。なんだかバツが悪そうな顔をしている。
もう一人はにこにこと感じのいい中年だった。
「今日はうちの者が世話になった様で、お礼をしにきました」
「いえ、そんなお礼だなんて」
生活のために剣闘士になる必要がある人を負かせたおいめがあるから困った。
「お金までいただいて何もなしと言うわけには、なぁ?」
話を振られて青年はビクッとしたあと、おずおずとうなづいて見せた。
「明日の集団戦のメンバーでお困りではありませんか?」
「それはたしかに」
今から集めるとなると深夜まで歩き回らなきゃいけないだろう。
「では我々がご一緒致します」
「助かりますけど、ご迷惑じゃないですか?」
「このままでは我々の気がすみません、どうかご一緒させてください」
「それじゃお言葉に甘えて、ありがとうございます」
「いえいえ、それではまた明日」
中年は話している間ずっと変わらない笑顔でそう言うと帰っていった。
「ベイル聞いた?」
「うさんくせぇ話、信じるつもりかよ」
僕は渋い顔をするベイルの側に戻り、おもむろにお腹から胸をマッサージで揉みしだく。
「あひっあっあっ、ひもひ……ィイッン」
ハートマークがたくさんついた様な言い方でベイルはビクンビクンと痙攣しながらトロトロにとろけた。
「ワリスはあんなこと言ってたけど、結果オーライでよかった」
ベイルはマッサージを終えると気絶していたので、彼の自分の体を湯浴みで綺麗にして、その晩はベイルを抱いて同じ部屋で寝た。
そして翌日。




