498回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 296: 価値無き者の命(4)
「ふんっぬっ!」
「ドルフ大丈夫?やっぱり降りようか?」
「なぁに平気平気!」
そんなわけで今僕は、ドルフにおんぶされながら、ベイルをおんぶするストロングスタイルの行脚を敢行しています。
「何やってんだよこんな時に」
陽介すら僕らを理解できないと言った様子で怪訝な顔をしている状況。
さっきの状況から大岡裁き状態に移行し、なんか気がついたらこの形式に落ち着いてました……。
「へんっハイエナのもやしっ子とは鍛え方が違うんだ、楽勝だぜ」
ドルフはそう言いながらひきつり笑いでダラダラと汗を流している。
「だってよ、気にせず任せとけよ雄馬」
そう言ってベイルは僕を抱きしめ、首元の匂いを嗅いでくる。鼻息がくすぐったい。
「つーかなんでお前が雄馬におんぶされてんだよ!」
「ドルフの旦那に雄馬を独占させてたまっかよぉ」
ドルフは災難かもしれないけど、この虎獣人の筋肉質で大きな背中が堪らなく居心地がいい。
「頼もしいなぁ、ねえドルフ、パパって呼んでもいい?」
「な、なんだよそれ、俺はお前の親父じゃねえぞ」
「側から見てると子供を背負った父親そのものだしなぁ」
「まじで?」
陽介の感想に驚きつつ確認するドルフ、陽介もアリスも彼にうなづいて見せた。
ちなみにアリスは相変わらず陽介におぶられてる。
「はぁー……パパの背中おっきくてもふもふで最高に気持ちいいよ」
「こらっ首元をもぐもぐするな!こしょばゆい、はうあっ吐息がぁっ」
「がんばれよぉドルフパパ」
「うるせえベイル、お前は降りろ!」
「やーだね」
「このやろてめえ!」
「ドルフの背中撫でるの気持ちいいね……」
「ひゃんっ!?やめれぇ、指使いが、指使いがいやらひぃかりゃあ」
ドルフは僕の攻め手に足をガクガクさせ、はぁはぁと荒い息遣いで悶絶する。
落ちるのは嫌なので悪ふざけはこれくらいにしよう。
「ふふふ、ドルフ可愛い」
「はぁ……はっ、お前も良い性格してやがんなぁ、まったく」
そうこうしている間に僕らは目的の場所、ヘルズベルの都市を取り囲む外壁までたどり着いた。




