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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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495回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 294: 価値無き者の命(2)

 騎馬兵は五 、槍。

 重装兵が五、盾と槌。

 軽装兵は十、分銅のついた鎖鎌。

 投石兵が五、革のベルトに石を引っ掛けて飛ばすタイプ。

 敵は以上二十五人の編成。


 ワリスは不参加、理由はキャラバンに武器を置いてきたからだと言うが、その割には野球観戦でもするかのような緊張感のなさで高台から僕らを見下ろしている。


「投石とかショボくね?」

 陽介が微妙そうな顔をしながら感想を述べ、ドルフが答える。


「石だからって侮ると痛い目を見るぞ。軽装だから動きが素早い。他の奴の相手をしてると背後から攻撃されて、気を取られてる間に正面の相手にバッサリ斬られる。かといって不用意に近づくとそのまま石で殴られるし、翻弄されてる間に囲まれて袋にされたりする」


「なんかこう嫌らしい戦い方なんだな」


「生死のやりとりの場に汚いもクソもないぜ、上品になんて言ってたらすぐに死ぬ」


 敵の動きを見張っていたキャラバンの人が、こちらに手を振り猛然と逃げ出した。


「さーておこしのようだぜ」


「みんな、さっき打ち合わせた作戦で行くよ」

 僕の言葉にその場のみんながうなづく。


「作戦開始ッ!」


 丘の向こうから悪魔のような仮面をつけた兵士達が飛び出してきた。


 まず騎馬兵の突撃、それに対し将冴が爆発魔法で応戦して動きを制限し、白騎士を使ったアリスと陽介が馬の機動力と召喚魔法の攻撃で騎馬兵を引きつける。


 敵側の勢いを利用してベイルが重装兵に向かって走る。

 ベイルに攻撃を仕掛ける投石兵に、ドルフが弓で応戦。

 ベイルは重装兵を盾に利用しつつ石を回避して、重装兵の動きを撹乱、軽装兵の守りがガラ空きになった。


 僕は軽装兵に向かって走る。

 軽装兵達は鎌を使った斬撃と、分銅を鎖で振り回して投げる投擲の複合攻撃を仕掛けてきた。


 将冴の援護により爆風で分銅が吹き飛ばされ、それによって生じた砂煙の粉塵に紛れて敵に近づき、まず二人山刀で仕留める。


 敵に捕捉され迫る分銅をギリギリ回避し、地面を滑るように移動して足払いを仕掛け、肘打ちで三人目を倒す。


 両側から迫った鎌の斬撃を体を翻して回避、後ろで振りかぶっていた一人の体を駆け上がり、肩を蹴ってバク宙し、四方から迫っていた分銅を回避。

 空中で分銅の一本を掴み、鎖を腕に巻きつけて引き、それを持った敵に急速に迫り、首を蹴り付け四人目を倒し、奪い取った鎖鎌を振り回して迫っていた分銅を鎖に絡み付かせ、動きを封じた相手の懐に潜り込み、顎を蹴り上げ五人目を倒す。


 将冴が僕を包囲した五人のうち二人を爆発魔法で吹き飛ばし、僕は残る三人と共に走りながら、左手のハンドサインをいくつか連続して行い、将冴はうなづき、僕に施したマーカーから魔法を起動する。


 左手から放った爆発で一人倒し、背後から迫った鎌の斬撃を腰のジェット爆発による後方移動で回避、敵の背後を取り回し蹴りで延髄を蹴り付け倒す。

 最後の一人が叫びながら鎌で斬撃を仕掛けてくる。

 僕はそれを山刀で払うと、返す刃で逆袈裟に打ち付けて軽装兵を仕留めた。


 ベイルとドルフの方を見ると、彼らも自分の割り当てをそれぞれ撃破し僕にサムズアップしてみせる。


 残りは騎馬兵だ。

 陽介とアリスの乗った白騎士の馬が相手をしているが数は変わらない。

 二人とも人間相手に本気で攻撃することを恐れて防戦一方になっているらしい。


 僕は指笛を鳴らして、陽介達に合図を送る。

 彼らはそれに気づいて、騎馬兵を引き連れ僕に向かって走ってきた。

 僕は山刀を下段に構え、体を捻り溜めを作る。


 陽介達は騎馬兵からの槍の追撃を交わしきれず、アリスを庇った陽介がHPのバリアで槍を弾いた。

 それを見た騎馬兵の一人が急停止し、進路変更してその場を離れる。


「逃げた?」


「違う、不味いぞ!追え陽介!!」

 将冴が叫んだ。


「わかってらあ!!」

 陽介も顔を顰め、馬を翻し離脱した一人を追い始める。


「どうしたの?」


「プレイヤーはメルクリウスの主兵力だ。領地にいる事を知らされたら大部隊が来てメチャクチャにされるぞ」


 僕はそれを聞いてオブジェクトで槍を地面から放ち、騎馬兵の進行を阻害する。


「キャストコール!ウィールオブタラニス!!」

 陽介が杖を掲げると宙空に稲妻の車輪が現れ、騎馬兵を雷撃で昏倒させた。


 陽介達を包囲する形で追撃する四人の騎馬兵に対して、僕は将冴にサインを出し、空中を爆速で跳び、山刀による爆裂斬撃を横凪に放ち、騎馬兵を全滅させた。


「斬撃に爆破魔法を乗せるとこんな効果に変化するとはな。思ったより応用が効く」

 将冴は興味深そうにそう呟く。

 

「君が味方だとこんなに頼もしいなんてね」


「皮肉か貴様」


 そう言いつつも反省しているらしく、彼は少しばつが悪そうな顔をした。

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