488回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 287:荒野で生きる者たち(13)
キャラバンにたどり着くと、そこにいた覆面集団はワリスに頭を下げ挨拶した。
「ただいま、私の後ろにいるのはお客さんだから警戒しなくて大丈夫だよ」
そういうと彼女はキャラバンの人達となにやら会話し始めた。
「うわー本当にあの人関係者じゃん」
「大丈夫なのかよここ」
みんなは陽介に心配そうな目を向け、陽介はその圧にたじろいだ。
「知らなかったんだから仕方ないだろ、前は何事もなく助けてくれたし、なぁ将冴」
「知らんな」
そう言って将冴は何食わぬ顔でこちら側に立っていた。
「汚ねえぞ将冴!お前もここに来るの賛成してただろ」
糾弾する陽介の前に弾むようにワリスが入ってきた。
「はーい、お待たせ。泊まっていくでしょ?借りれる住居あるみたいだから案内するわ」
この人の良さそうな所がワリスの性格なのか、それとも凶暴な方が本当の性格なのかわからなくて困惑してしまう。
「目的地には来れたわけだし、とりあえず泊まらせてもらおう」
みんなにそう提案すると、みんなも多少困惑したまま了承しキャラバンの人に案内され、それぞれの住居へと向かった。
集落の中を歩きながら住民達はみな一様に覆面をしていて、会話をしているような人はおらず、情動らしいものも見せず、なんだか機械的に生活を営んでいるように見えた。
僕は自分に割り当てられた住居にベイルとドルフの二人で入った。
建物のスペースの都合で、二人ずつの滞在を勧められたが、ドルフがどうしてもと言うので現状に至る。
「雄馬ぁ俺今日も頑張っただろ?褒めて褒めて」
「もーベイルったら甘えん坊さんなんだから」
僕に抱きつき頬を舐めるベイルの頭を撫でると、彼は軽く喉をクルルと鳴らして僕の膝の上に頭を乗せ、うっとりと撫でられ始めた。
眼前にはあぐらをかき、こちらを凝視しながら鬼のような形相をしているドルフがいる。
気まずい……、この状況で平常運行できるベイルの心が強すぎる。
「えっと、ドルフもやる?」
「んなっ!?」
ドルフは僕の言葉に驚きひっくり返った、そんなに驚く事かな?
彼は目を丸くし、汗をダラダラ流してオロオロすると、顔を赤らめ恥ずかしそうに「……いいのか?」と上目遣いに聞いてきた。
「へへっドルフさえ良ければ大歓迎だよ」
ドルフさんもかわいいじゃないですか、僕は思わずにやけ顔で答えてしまった。
ドルフは躊躇いがちに、僕に体を擦り寄せて、頭を膝の上に乗せ、僕の顔をじっと見上げた。
赤い顔をしながら、フゥフゥと荒くついた鼻息が僕の顔まで届いてくる。
緊張してるのか、虎の厳つい顔で至近距離でやられるとなかなかのど迫力だ。
僕はベイルを撫でながら、ドルフの頭にもそっと触れる。
意外と柔らかい毛が指の隙間を通り抜けて気持ちいい。
撫で続けているとドルフは吐息を吐いて目を閉じ、体の力を抜いた。
ベイルとドルフに完全に信頼されきって頭を撫でることが出来るこの幸せ。
カキカキわしゃわしゃ、僕は二人に感謝を込め全身全霊を込めた撫でを行う。
二人は甘い声で喘ぎはじめ、ビクンビクンと痙攣しながら、僕にされるがまま撫でられ続けるのだった。




