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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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486回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 285:荒野で生きる者たち(11)

 触手の一撃が迫り、ベイルがその先端に放った蹴りで軌道がそれた。


「悪い雄馬、足がすくんで動けなかった」


 ベイルは苦笑いしながらキメラを見上げている。

 尻尾は股間に巻き込み、足は震えている。

 それなのに助けに来てくれたことが嬉しくて僕はベイルの背中を撫でた。


「大丈夫、僕らならやれるよ」


「おう!」


 僕らは息を合わせて左右に走り出した。

 キメラの標的は依然として僕だ。


 キメラの放つ触手には将冴の支援が入り、落としきれなかった分はドルフの斬撃と、ベイルの蹴りが封じ込める。


 アリスと陽介による背後からの攻撃に怯んだ隙に僕が距離を詰める。

 僕の腰で爆発が起きブースターを使った時の様に身体が舞い上がり、その爆発が連鎖し高速回転して、僕はその力を利用して山刀でキメラを斬りつけた。


 山刀で斬りつけた傷口にすかさず大爆発が起こり、キメラの体が大きく引き裂かれ、心臓の様なものがむき出しになった。


「すっげえ」


 ベイルが感嘆の声をあげる。

 すかさず山刀を持ち替え、両手で心臓を突くが鋼の様な硬さで弾かれてしまった。


「避けろ山桐」


 将冴の声に振り返ると、彼はこちらに向かい大魔法の準備をしている様だった。


「ソリッドブレイク」

 将冴が唱えると八つの火球が連なり円を描く様に高速回転し、その中心に将冴の杖から強烈な光の火球が拡大していく。

 複合詠唱だ、悪寒が走り僕は琥珀のダガーで蔓を伸ばして勢いよく飛び上がった。


「バンカーバスター」

 将冴が唱えた瞬間、八つの火球が爆発し、そのエネルギーで爆縮した中心の火球が炎の槍の様になって超高速でキメラの心臓に着弾、大爆発を起こした。


 心臓は表面が破裂し、瞬間的に炭化して消滅した。

 そのあまりの威力にみんな言葉を失っていた。


 僕は爆発で起きた衝撃波を使い宙返りして、木の枝を何本か蹴り折って、落下の勢いを殺して着地する。


「あんな魔法使えたんだ」


「俺の魔法には貫通力が足りないらしいからな、作った」


 簡単に言ってくれるなぁ。


 助けて、と小さな声がしてキメラの方を見る。

 崩れて今にも溶けて消えそうなその体を力なく引きずり、嘆願する様な目で僕をみながら黒い涙を流していた。


「近寄らないほうがいい」


 ドルフに言われたが、僕はどうしてもキメラに意思があるように思えた。


「もしかすると話ができるかも」


 震えながら小さな手を伸ばすキメラに近づくと、キメラの体が突然大きく開いて僕を取り込もうとした。


 その刹那、どこからか巨大な鎌が飛んできて、キメラ首を落とし、僕はすんでのところで取り込まれずに済んだ。

 呻き声はもう聞こえなくなっていた。


「あっれー、君メルクリウスにいた子だよね?」


 そう言いながら上から一人の女性が落ちてきて鎌の柄を踏んで引き抜き着地、鎌を空中で回転させ背中でキャッチすると彼女は艶やかな黒髪を靡かせる。


「久しぶりね山桐雄馬」


「ワリス」


「名前覚えててくれたんだ」


そういうと彼女は爽やかな笑顔を見せた。

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