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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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485回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 284:荒野で生きる者たち(10)

---


 陽介はベイルに運ばれて後退した。

 彼らの退路を守る為にドルフが前に出て、化け物と戦う雄馬を見て唸る。


「あいつまた目先のことしか見えなくなってやがる」


 ドルフはそのまま飛び出し、雄馬の支援に向かった。


「なんだあの化け物、それに雄馬もなんだか辛そうな顔で……」


 陽介は不貞腐れながら雄馬を見ている将冴を見て、事情に感付き声をかけた。


「お前二人きりの時に雄馬に何か言ったのか?」


 将冴は目を細め冷たい顔をした。


「無神経なあいつが知るべきことを話したまでだ」


「お前……雄馬に何かあったら、許さねえからな!」


 そういって陽介は召喚魔法の詠唱を始めながら雄馬の支援に向かった。


「陽介無茶しないで」


 アリスも白騎士を召喚し、白騎士に抱き抱えられながら馬で陽介を追う。


 そんな彼らを見て将冴の脳裏にあの夜伊織に言われた言葉が蘇っていた。


「俺にない物か……」


---


「グゥッ!」


 化け物の攻撃を山刀で受け、吹き飛ばされて地面を滑りながら着地する。

 いろんな生き物の体が混ざっていてキメラみたいだ、どこからどう攻撃がくるか読みきれなくて戦いにくい。


 それに人型のモンスターが混ざり合って蠢いてるみたいで見てると吐き気がしてくる。

 それに厄介なのは声だ、助けてと泣き喚きながら攻撃してくるのが精神的に堪える。


 琥珀のダガーで周囲の木々から全方位の木の槍を伸ばして貫くが、化け物は悲鳴を上げながら引きちぎってすぐに猛然とこちらを追ってくる。


 もう一撃攻撃が迫り、間一髪山刀で受けるが、攻撃が重くまた吹き飛ばされてしまった。

 背後に木が迫る、ぶつかる!


 ドスンッ。


 僕の体はドルフの毛皮と筋肉に抱きとめられていた。


「下がってろ!」


 化け物と僕の間に、馬に乗った陽介が割って入り、槍を化け物に向けて叫ぶ。


「キャストコール!ラットオンバーナーッ!!」


 宙空から無数の火に包まれたネズミが飛び出し、群れとなってキメラの体を包み込んだ。


 耳をつんざく様な悲鳴、助けてと繰り返す声が絶叫へと変わる。

 みんなには聞こえていないこの状況に頭がおかしくなりそうだ。


 そんな僕を見透かしたかの様に、キメラの体にいくつもの目が開かれ僕を凝視する。人間の目だ。

 さらにその体にいくつもの切れ目が入り、血が吹き出して全身の火を消すと、割れ目が開き人間の口がら現れ一斉に甲高い悲鳴を上げた。


「なんなんだよこれぇ」


 たじろぐ陽介を他所にドルフはキメラの目を矢で潰していく。

 痛覚がないかの様にキメラは真っ直ぐ僕に向かって這いずり、腕を腕で繋いだ触手のようななものを生やして僕を狙ってきた。


「こいつ、雄馬を狙ってるのか?」


 触手を山刀と体捌きで交わし、触手を蹴って飛び、木の幹を蹴り、枝を蹴る三段跳びで距離をとる。


「山桐!」


 将冴の声に振り返ると、そばに来ていた彼が僕に杖を向け、僕の体の各関節に小さな魔法陣の様なものが浮かんで消えた。


「これはマーカー?」


 マーカーとは他のプレイヤーに張り付ける魔法射出口のスキルだ。


「どうして僕に?」


「お前には俺にない良いところが沢山ある、そう伊織が言っていたんでな。見せてもらうまで死なれては困る」


 そう言ってキメラに向き直る将冴、ぶっきらぼうな表情は相変わらずだが、彼の助力は助かる。


「わかった、死なない様にがんばる!」


 僕は山刀を構え、こちらに向かってくるキメラに向かい走った。

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