481回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 280:荒野で生きる者たち(6)
「なぁどれくらいでつけそうなんだ?」
アリスを肩車しながら陽介は尋ねる。
「日中には着けるだろう」
先頭を歩く将冴は、こちらを振り向かずにそう答えた。
出発してからどことなく将冴が僕らと目を合わせようとしないのが気になる。
「将冴、もしかしてなにか僕らに言いたいことがあるんじゃない?」
尋ねると彼は足を止めた。
言おうかいうまいか悩んでいる様だ。
「らしくないな、お前いつも必要な事ならさっさと片付けるのに」
陽介の言葉に後押しされたように、将冴は僕らに振り向き真剣な目をした。
「今から話すのは憶測や冗談なんかじゃない、お前たちが知っておくべき事実だ」
「勿体つけんなよ」
「プレイヤーは死ぬ、アバター化していてもHPが尽きたり、HPで防げない攻撃を受ければダメだ。だから無理はするな」
「え……?」
アリスが驚きの声を出す、陽介も固まっている。
「どうしてそれを知ったの?」
「理由は……聞かないでくれ」
将冴に尋ねると、彼は気まずそうに目を逸らしてそう言った。
「安全が確保できるまでアバター化は解くな」
「おい将冴、そんなこと言われたっていきなり信じられるかよ」
将冴は僕らに背を向け歩き出す。
「俺だって認めたくない。この世界はゲームで、本当の俺は現実にいるんだと思っていた。だがここで発生する死は取り返しがつかない、リトライなんてできないんだ」
彼はそう言って先を急ぐ様に歩速を早めた。
「行こう」
僕は立ちすくんでいた陽介の背中を叩く。彼は「ああ、今はそれしかないな……」と言って歩き始めた。




