479回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 278:荒野で生きる者たち(4)
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気がつくと僕は暗い闇の中にいた。
そこにいるのは僕一人のはずなのに、無数の気配が蠢いている、奇妙な空間だ。
「やぁ、ようやく話が出来るところまで君と繋がった」
その言葉とともに目の前の闇の奔流が道を開き、ネズミの魔法使いのような姿の少年が姿を表した。
「君は誰だ?」
「ボクはパット、君の相棒だよ雄馬。君に大切なことを伝えにきたんだ」
闇の中にミキノが現れ。彼女が化け物のシルエットに変貌していくイメージが浮かんで消えた。
「大罪の悪魔を倒さなければ、兆しが訪れ世界が終わってしまう。大罪の悪魔を倒す手段は一つだけ、そしてそれは君にしか出来ない」
「そんな力僕にはないよ、それに僕は伊織を助けなきゃ」
「君の友達だね、助けるための手段はまだわからない。ただ一つだけ言えるのは、君には紅玉の腕輪が必要という事だ。それがあれば君は大罪の悪魔に対抗する力を得られる」
「どこにあるの?」
「ヘルズベルの都市に向かって、あそこから紅玉の腕輪の気配がする。君を待ってる」
闇の奔流が体に絡みつき、僕をパットから引き離していく。
「忘れないで雄馬、君にしか大罪の悪魔は倒せない。みんなを救えるのは君しかいないんだ」
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「待って!まだ聞きたいことが……ん?」
目を覚ますと僕は即席テントの中にいた。
「ゆうま、ごはんおいしい……」
「もう離さないぞジョッシュぅうー」
「ぐえっ!?首に入っ苦しいっ苦しいってドルフ!」
ムキムキもふもふなドルフのハグが首に入り、なんとか腕をこじ開け位置をずらして一息ついた。
状況を確認すると、ベイルとドルフに左右から抱きしめられた形で寝ている僕の構図。
みんなの要望分テントを設営し、僕はベイルと二人部屋、ベイルと一緒に寝たところまでは覚えているが、なんでドルフまで僕を抱きしめて眠ってるんだ?
「俺がお前を守るかりゃな……隊長の分まで俺が……」
そう言ってドルフは僕の頭を抱きかかえ、撫でながら頬に頬擦りをした。
「ほわぁ……」
ちょっと大変な状況ではあるけど、こうしてもふもふな二人に愛情いっぱいハグされて寝るのも幸せかも……。
僕はうっとりとしながら、二人が起きるのを待つのだった。




