471回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 270:空に輝く虹のように(6)
---
激闘を制し、仲間に讃えられている雄馬を見つめる男がいた。
男はかつての自身の姿を、雄馬に重ねていた。
雄馬が来るまでは、祓魔師のリーダーである彼は仲間達から尊重されていた。
しかしアバター化できない雄馬のハンディーをものともしない活躍、そして足手まといだったほのかを躍進させたその手腕から、今や祓魔師達の関心は雄馬に集まっている。
それに比例するように、みなはリーダーに対する陰口を口にし始め、彼に冷ややかな態度をとるようになっていた。
彼にとってそういった変遷は初めてではない。
だから対応方法も熟知している。
判断が軽率な者の思考は、少しの刺激で反転させる事が可能だ。
他者を価値で図るものは、圧倒的価値を示す他者に支配されやすい。
そのための手段を始めるため、彼は雄馬に近づき声をかけた。
---
「やぁ雄馬、素晴らしい活躍だったね」
「あ、ありがとう」
「なんだよ将冴、お前が人を褒めるなんて珍しいな」
将冴に突然褒められ、僕と陽介は思わず警戒した。
「ははは、そんなに身構えないでくれよ。まだ帰還までは時間がある、話したい事があるから付き合ってくれないか?」
「将冴から雄馬に話ってなんだよ、なんか怪しいな」
「邪魔をしないでくれないか?それに二人きりで話したい、君はついてこないでくれ」
「なんだと!」
「まぁまぁ、わかったよ。人に聞かれたくない話って事だよね」
「ああ、その通りだ」
将冴はニヤリと笑う。
なんだか怪しいけど断っても面倒なことになりそうだし、素直についていくことにした。
たどり着いた場所は競技場のような広場だった。
人気がなくてなんだか寒々しさを感じる光景だ。
「それで、こんな所でなんの話?」
将冴は振り返ると、気持ちのいい笑顔をした。
「君にはここで死んでもらいたくてね」
将冴は不意打ちで爆発魔法を撃ってきた。
交わしきれず直撃、僕は爆発魔法の業火に飲み込まれた。




